衛星画像を用いたモンスーンアジアでの主要穀物の栽培期間の推定


[要 約]
 衛星から得られたデータが雲や水蒸気,大気混濁物質などの影響を大きく受けるモンスーンアジア地域について,これらの影響を除去した植生指数(NDVI)画像を作成して植生指数の季節変化を旬単位で明らかにし,主要穀物の栽培期間の分布を推定する。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 地球環境部 食料生産予測チーム
                  地球環境部 気象研究グループ 気候資源ユニット
                  地球環境部 生態システム研究グループ リモートセンシングユニット
[分 類] 学術

[背景・ねらい]
 気候および土地利用などの環境が変化することによって,現在の水資源の需給バランスが崩れ, 食料生産がその影響を受けることが指摘されている。水稲が主要穀物であるモンスーンアジアではこの影響がとくに大きいと考えられ,この地域全体の食料生産の変化を評価するためには,農耕地での水資源の需給バランスを左右する栽培期間とその分布を明らかにする必要がある。そこで,モンスーンアジア全域を対象として,衛星画像の時系列解析により主要穀物の栽培期間の分布を推定する。
[成果の内容・特徴]
  1. モンスーンアジアという広域での植生を捉えるには,人工衛星から得られた植生指数(NDVI)画像データが有効である。しかし,この地域には明瞭な雨季があり,そのため画像データは雲や水蒸気,大気混濁物質などの影響を強く受ける。そこで,この影響を取り除くために,画像データに時系列のフィルタリングと調和関数を当てはめる処理を施した。これから,雲などの影響を取り除いたNDVIの季節変化が求まる(図1)。
  2. 主要穀物の栽培期間とNDVIの季節変化との関係を明らかにするために,均質な栽培期間のデータが得られる日本の水稲について解析した。移植日から収穫日までを水稲の栽培期間と定義し,また,移植日直後と収穫日直前のNDVIを求め,その度数分布を示すと,NDVIは0.4を中心に分布する(図2)。さらに,図2と独立なデータを用いて,水稲の栽培期間とNDVIが0.4以上の期間を比較すると,両者の差はほぼ10日の範囲に収まる(図3)。中国黒竜江省と浙江省について,聞き取り調査を行ったいくつかの水田に関しても,水稲の栽培期間とNDVIの季節変化は同様な関係が得られた。以上のことから,水稲の栽培期間をNDVIが0.4以上の期間とする。
  3. NDVIと,水稲,小麦,トウモロコシ,大豆など主要穀物の生育過程との対応が類似であることから,穀物の種類が変わっても,NDVIの時間変化と栽培期間との関係は変わらないと仮定し,モンスーンアジアの主要穀物の栽培期間に関する分布を推定する(図4)。 これによると,栽培期間は,東北日本で150日,西南日本で250〜300日と推定された。また中国東北部では100日,華北地方では150〜200日,華南地方では250〜300日と推定された。この様に,モンスーンアジアでは,地域によって主要穀物の栽培期間に大きな違いがあることがわかる。
[成果の活用面・留意点]
 栽培期間の分布を推定することによって,モンスーンアジアの農耕地での水需要量を推定することができる。なお,この推定方法を適用する時は,前もって対象地域の農耕地分布を明らかにしておく必要がある。

[その他]
 研究課題名 : 農業生産マネージメント的視点から見た気候変動影響評価(地球規模の環境
        変動に伴う生育阻害要因を考慮した東アジアのコメ生産力の変化予測)
 予算区分  : 文科省:先導的研究[水資源変動予測]
 研究期間  : 2003年度(2001〜2003年度)
 研究担当者 : 鳥谷 均,大野宏之,西森基貴,石郷岡康史,原 政直(ビジョンテック)
 発表論文等 : 1)鳥谷ら,システム農学会2003年度春季シンポジウム・一般研究発表会講演要旨集,69-70(2003)
               2) 鳥谷ら,農業環境工学関連5学会2003年度合同大会講演要旨集,70(2003)
               3) Toritani et al., Program and abstracts on the international conference on research on
                water on agricultural production in Asia for the 21st century, 30(2003)

目次へ戻る