トウモロコシ花粉飛散量自動モニター装置の開発


[要 約]
 大粒径の大気生物粒子であるトウモロコシ花粉の飛散量を,簡易かつ連続的に自動計測できるモニター装置を開発した。空中花粉の基準的測定法として広く用いられているダーラム法による花粉計測値との相関は極めて高い。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 地球環境部 気象研究グループ 大気保全ユニット
                  生物環境安全部 組換え体チーム
[分 類] 技術

[背景・ねらい]
 遺伝子組換え体花粉の飛散による同種間の交雑が問題となっている。これに対処するには,問題 となる作物花粉の拡散動態を把握し,気象条件等との関係を明らかにしなければならない。しかしながら,ダーラム法など既存の花粉計測法は,顕微鏡での花粉計数に多大の労力を必要とする。そこで,代表的な風媒花植物であり,花粉による交雑が問題となっているトウモロコシについて,大粒径花粉の光学的および空気力学的特性を考慮して,簡易に花粉飛散量の連続的な自動測定ができる装置を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. トウモロコシ花粉はきれいな球状であり,粒径は花粉の中で特に大きく約100μmもある。これはスギ花粉のおよそ3倍の粒径,27倍の重さに相当するため,同じ花粉でも全く異なった光学特性と運動特性を持つ。農業環境技術研究所の圃場及び室内での試験によって,トウモロコシ花粉飛散量の計測に最適な光学系,気流系を作成する。
  2. 光学系について,半導体レーザーからの光は,光収束用及び調光用レンズを通して,照射部において厚さ約60μmのシート状ビームにして,花粉を照射する(図1a)。光源の最適値は波長780nm,出力3mWである。
  3. 花粉に照射された光はあらゆる方位に散乱するが,前方と側方に検出器を設置し,受光したパルス幅と強度をもとに識別アルゴリズムによって,該当粒径の球状粒子だけを検出する。粒径識別レンジの幅が±20μmになるように,レンジの上限と下限を決定する。散乱光特性は,実際のトウモロコシ花粉を用いて取得する。
  4. 気流系について,大粒径の花粉は落下する際の慣性力が大きく,吸引口に入りにくい。そこで,花粉を計測部に導くために,吸引口の前に気流を収束させる装置を設ける。各種形状を比較した結果,ガラス製ロート(開口部直径100mm)が効率よく花粉を捕捉し,野外での花粉飛散に対して花粉モニターが適切に応答する(図1b)。吸引速度は毎分4.1リットルが最適である。濾過した気流を循環させることにより,応答が安定する。
  5. 本花粉モニター装置による花粉飛散量の日積算値は,空中花粉の基準的測定法として広く用いられているダーラム法による花粉計測値(日値)との相関が極めて高く,相関係数は0.95となる(図2)。
  6. 本花粉モニター装置を用いることで,時間分解能が向上するため,花粉飛散の日変動がわかる(図3)。午前中にピークがあり,正午にはピーク濃度の半分以下に減少する。日の出後の濃度増加は急であるが,ピーク後から夜にかけての濃度減少は緩やかである。
[成果の活用面・留意点]
  1. 遺伝子組換えトウモロコシの環境影響を推定するための試験研究で,大気モニタリング装置として使用し,花粉の飛散量,飛散距離等の基礎データ取得に活用できる。
  2. 圃場に設置する際には,近隣植生などによる局所的気流の影響が入らないようにするため,植生などと密着しないようにする。

[その他]
 研究課題名 : 農業生態系における大気質の放出・拡散過程のモデル化と濃度評価手法の開発
        (農業生態系における炭化水素,花粉,ダスト等大気質の放出・拡散過程の解明)
 予算区分  : 運営費交付金
 研究期間  : 2003年度(2001〜2005年度)
 研究担当者 : 川島茂人,杜 明遠,井上 聡,米村正一郎,松尾和人,芝池博幸,吉村泰幸
 発表論文等 : 1)川島ら,第3回つくばテクノロジー・ショーケース(2004)
               2) 川島,日本生気象学会雑誌,40(1),37-47(2003)

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