玄米に含まれるカドミウムのレーザーを利用した直接定量法の開発


[要 約]
 玄米中カドミウム含量を,レーザー照射とICP質量分析装置を組み合わせることにより直接定量する手法を開発した。この手法は従来に比べ複雑な前処理が不要であり迅速な分析が可能であることから,出荷時における分析として有用である。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 環境化学分析センター 環境化学物質分析研究室
[分 類] 技術

[背景・ねらい]
 現在,米に含まれるカドミウムの国際基準値の策定作業が進められており,0.2ppmの基準 値原案が提案されている。我が国では諸外国よりもカドミウム濃度が高い傾向にあるが,地域差・品種間差が大きく実態把握には非常に多くの試料を分析する必要がある。また,収穫から出荷までの短期間にカドミウム含量の評価を行わなければならない。しかしながら,従来の分析法は強酸分解等の煩雑で時間を要する操作が必要であり短時間での多検体分析には向かない。そこで,米に含まれる微量のカドミウムを複雑な前処理なく迅速に直接分析できる手法を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 加圧成形された玄米粉末ディスクに波長213nmのレーザーを照射し,気化したカドミウムをICP質量分析装置(図1)で分析することにより,玄米粉末中カドミウムの直接定量が可能である。
  2. 分析に必要な前処理は玄米の粉砕と加圧によるディスク成形のみであり,従来前処理に用いられてきた強酸や有機溶媒・試薬は不要である(図2)。
  3. 基準値原案0.2ppmの1/10以下の低濃度から1ppmを超える高濃度試料まで分析が可能である(図3)。
  4. 1検体当たり1回の分析時間は約60秒である。なおレーザー照射表面の不均一性のために分析値がばらつくので,1検体当たり5回の平均値を利用することが望ましい。
  5. 低濃度のカドミウムの場合はモリブデンオキサイド(95Mo16O)による質量干渉の補正を行うことで,より正確な定量が可能になる(図4表1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 従来の分析法の代替として多検体分析に利用できる。特に出荷時における迅速な分析法として有用である。

[その他]
 研究課題名 : 農業環境中におけるカドミウム等微量元素の分離精製・ICP-MS分析法の開発
        (農業環境中のカドミウム等の超微量分析法の開発)
 予算区分  : 運営費交付金
 研究期間  : 2003年度(2001〜2005年度)
 研究担当者 : 馬場浩司,渡邉栄喜,殷 煕洙,荒尾知人
 発表論文等 : 1)Baba et al., J. Anal. At. Spectrom., 18(12), 1485-1488(2003)

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