は じ め に

 わたしたちは、法人が発足してから新しい農業環境研究を目指してさまざまな角度から研究所の構造を改革しました。さらに、この構造がうまく「機 能」するためのシステムを構築してきました。当たり前のことですが、農業環境技術研究所は、明確な目的のために存在する集団です。すなわち、わたしたちはこの組織を共同体ではなく機能体として捉えています。したがって、「機能の向上」をさらに追求することが、研究所の使命でなければなりません。

 そのために、研究所が忘れてならない活動に、受信(社会・専門・政策)、研究(自己増殖・成長)、討論(セミナー・啓蒙)、貯蔵(インベント リー・発酵)、評価(組織・課題・成果)、発信(専門・一般・パブリックアセスメント)、提言(リスク評価・マスタープラン)および宣伝(新聞・TV・雑誌)があります。

 ここにお届けする農業環境技術研究所の成果情報は、平成15年度に実施した研究のうち、「農業と環境」に関わる主要な成果を冊子としてまとめたもので、上に掲げた活動のうち、「評価」と「発信」に当たる部分を担うものです。

 この成果の中には、新たな「技術知」と「生態知」と「統合知」が含まれます。「技術知」とは目的と手段を定めたうえで、資源を活用し水平方向に新しい技術を開発していく知です。「生態知」とは現場で観察し、獲得してきた知です。「統合知」とは、これらの二つを融合した知です。この成果集には、これらの「知」が混在しています。

  江戸時代の儒学者である伊藤仁斎は、彼の著書「童子問」で次のように語っています。
     大抵詞(ことば)直く 理明(あきらか)に 知り易く
     記し易きものは必ず正確なり
     詞難しく 理遠く 知り難く
     記し難きものは必ず邪説なり

 この冊子が伊藤仁斎の詞を満たしているとは努々思いませんが、できるだけ仁斎の詞に近づける努力はしました。それでも、研究成果の要点のみを簡潔にまとめようとしたので、細部については不明な点もあると思われます。不明な点、さらにはご意見やご質問があれば、当所の研究企画科にお問い合わせください。

 この成果情報が、みなさまにとって有意義な情報になることを願っております。

平成16年3月

(独)農業環境技術研究所
理事長  陽  捷 行

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