アシベンゾラルSメチルは葉面糸状菌相に影響を及ぼさない


[要 約]
 ジチオカーバメート系などの殺菌剤散布は,キュウリやナシの葉面糸状菌相を単純化させ糸状菌数を減少させるが,非殺菌性の病害抵抗性誘導化合物,アシベンゾラルSメチルは葉面糸状菌相に影響しない。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 化学環境部 有機化学物質研究グループ 農薬影響軽減ユニット
[分 類] 学術

[背景・ねらい]
 施設栽培のキュウリや圃場のナシでは,病害防除に殺菌剤が多用されることが多い。一方,病原 微生物等に殺菌作用を持たないベンゾチアジアゾール系化合物アシベンゾラルSメチル(ASM)は,持続的な全身抵抗性誘導効果を示すことが明らかになっている。そこで,農薬の環境影響軽減に果たすASMの可能性を探るために,作物の葉面糸状菌相に及ぼすASMの影響を数種の殺菌剤と比較する。
[成果の内容・特徴]
  1. ビニルハウス内のキュウリ及び圃場のナシに,約2週間間隔で計4回, ASMまたは各種殺菌剤を散布した。最終散布終了直後に所定部位より葉を採集してディスクを打ち抜き,徳増(1998)の方法によって葉面糸状菌を分離,培養した。胞子形成のみられる菌は顕微鏡による形態観察で,胞子形成のみられない菌はPCRで増幅したrDNA-ITS領域の塩基配列をジーンバンクに登録されているデータベースと比較することによって,菌の属を同定した。
  2. キュウリでは,ジチオカーバメート系殺菌剤マンゼブ,ストロビルリン系殺菌剤アゾキシストロビン,ステロール脱メチル化阻害剤トリフルミゾールの散布により,分離される糸状菌の種類と菌株数が減少した。一方,ASMでは葉面糸状菌相の多様性がよく保持され,分離菌株数も多かった(図1)。
  3. ナシにおいても,ジチオカーバメート系殺菌剤ポリカーバメートの散布で分離される糸状菌の種類と菌株数が減少したが,ASMでは減少しなかった(図2)。ストロビルリン系殺菌剤クレソキシムメチルの散布でも,糸状菌の種類と菌株数が減少する傾向がみられた。
[成果の活用面・留意点]
  1. アシベンゾラルSメチルによる全身抵抗性誘導の持続的効果により,キュウリうどんこ病やべと病,ナシ黒星病の効果的な防除が可能である。
  2. アシベンゾラルSメチルはキュウリやナシに農薬登録がないため,これら作物の実用場面にはまだ使用できない。また,散布濃度が高くなると作物に薬害を生じることがある。

[その他]
 研究課題名 : 環境低負荷型農薬の創製を目指した全身抵抗性誘導機構の解明
        (新規資材による生体防御機能等の活性化機構の解明)
 予算区分  : 運営費交付金,委託プロ[生物機能]
 研究期間  : 2004年度(2003〜2005年度)
 研究担当者 : 石井英夫

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