侵入害虫クロテンオオメンコガ(新称)の国内における広範囲での発生確認


[要 約]
 クロテンオオメンコガ(新称)はチョウ目ヒロズコガ科に属し,海外では観賞用植物,バナナ,サツマイモ,トウモロコシなどの害虫として知られている。これまで,わが国では小笠原での採集記録のみであったが,本州から沖縄に至る広い範囲で発生していることを今回新たに確認した。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 農業環境インベントリーセンター 昆虫分類研究室
[分 類] 学術

[背景・ねらい]
 クロテンオオメンコガOpogona sacchari(Bojer)はアフリカ,中南米,ヨーロッパに分布し,最近北米に侵入した害虫である。研究担当者らは近年,ドラセナ,パキラなどの観賞用植物を中心に発生した本種の同定依頼を頻繁に受けるようになった。そこで,わが国における本種の同定依頼記録,加害植物や発生実態に関する情報を収集し,発生状況を明らかにするとともに日本での定着状況について検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 農業環境技術研究所と大阪府立大学大学院応用昆虫学研究室に同定依頼された本種をOpogona sacchari (Bojer)と同定し,新たに和名をクロテンオオメンコガと命名した(図1図2)。
  2. 従来のわが国における本種の発生記録は1986年の植物検疫での発見例と1999年9〜10月の小笠原父島での採集例の2件のみであったが,同定依頼の記録を改めて整理したところ,本州から沖縄に至る13地点で発生していたことを新たに確認した(表1)。
  3. 今回,わが国では観賞用植物での発生が多く確認されたが,他に熱帯果樹にも被害があった。また,家畜飼料でも発生することが確認されている(表1)ことから,わが国においても海外の報告にみられるように本種の広い食性が確認できた。
  4. 今回確認した発生状況などから,本種は少なくとも本州の新潟以南,四国,九州から沖縄にかけて発生を繰り返しており,わが国に定着したと考えられる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本種は,冬場でも施設内では発生が確認されており,それが次年度の発生に結びつくこともあると考えられる。また,今回は発生が確認されなかった北海道や東北地方でも,特に施設栽培での注意が必要である。
  2. 海外においては普通作物の被害も確認されている。また,貯穀害虫としても注目する必要がある。

[その他]
 研究課題名 : 所蔵タイプ標本等のデータベース化と昆虫インベントリーのためのフレームの構築
        (所蔵タイプ標本等のデータベース化及びインベントリーのためのフレームの構築)
 予算区分  : 運営費交付金
 研究期間  : 2004年度(2001〜2005年度)
 研究担当者 : 吉松慎一,安田耕司,広渡俊哉(大阪府大),宮本泰行(大阪府大)
 発表論文等 : 1)吉松ら,日本応用動物昆虫学会誌,48,135-139(2004)

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