水田土壌から分離した2,4-D分解菌の分解遺伝子はメガプラスミドに存在する


[要約]
国内8地点の水田土壌から分離された2,4-D分解菌の分解遺伝子の塩基配列は,3グループに分けられる。分離された14株のうち8株は,塩基配列が同じ分解遺伝子を大きさが同一のメガプラスミド上に持つ。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 化学環境部 有機化学物質研究グループ 土壌微生物利用ユニット
[分類] 学術

[背景・ねらい]
環境修復を目的とした組換え微生物が作出されているが,将来,こうした組換え微生物を野外で利用するためには,環境への影響を考慮し,組換え遺伝子の動態を予測してその拡散を防ぐ必要がある。しかしながら,野外環境における分解遺伝子の多様性および遺伝子の動態については十分に解明されていないのが現状である。そこで,環境修復を目的とした組換え微生物のモデルとして,世界各国で古くから使用されている除草剤,2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)の分解菌に着目し,それが有する2,4-D分解遺伝子を指標に,分解菌の日本における分布と多様性,およびそれぞれの分解遺伝子を運ぶプラスミドの有無について明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. 2,4-Dは日本では主に水田において使用されている。国内各地8地点の水田土壌から,2,4-Dを唯一の炭素源とする液体培地を用いた集積培養により,計14株の2,4-D分解菌を単離した(図1)。
  2. これまでに世界各地で調べられた2,4-D分解にかかわる遺伝子群は塩基配列に基づいて3グループに分類され,得られた14株の分解菌の分解遺伝子配列は,この3グループに分けられた(図1)。
  3. 上記8地点の土壌のうち,6地点の土壌から分離した8株(図1 印) の2,4-D分解遺伝子の 部分塩基配列は互いに100%相同で,アメリカで分離された分解菌Burkholderia cepacia RASC株の配列と98%以上の相同性を示す。これは,RASC株の分解遺伝子配列と高い相同性を示す遺伝子配列を有する菌株が、広い地域に存在することを示した初めての報告である。
  4. 上記8株は16SrRNA遺伝子の部分塩基配列に基づくと, Cupriavidus属菌(1株)とBurkholderia 属菌(7株)に分類される。また,7株のBurkholderia 属菌は同属ながら16SrRNAの配列に相違が認められ,異なる種類の菌である。これらの菌が同じ2,4-D分解遺伝子配列を保有することは,この2,4-D分解遺伝子配列が異なる種類の細菌の間を伝播していることを示唆する。
  5. 14株の分解菌の2,4-D分解遺伝子は,全てメガプラスミド(大型プラスミド)上に存在する。本研究で改良を加えたプラスミドの 電気泳動法(Eckhardt法)は,通常のアルカリSDS抽出法では検出が困難なメガプラスミドの研究に有効である。特に8株が保有するRASC株に類似の分解遺伝子は,大きさが同一の約600 kbのメガプラスミド上にある(図2)。 このことは,遺伝子の伝播に,既存の方法では検出されにくかった大型のプラスミドが関与することを示唆している。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果で得られた2,4-D分解遺伝子を有するメガプラスミドの構造や機能を解析することにより,土壌微生物における遺伝子の伝播を予測し,遺伝子組換え微生物の安全使用技術を開発するための基礎的知見が得られる。
  2. 2,4-D分解遺伝子の存在するプラスミドの伝達能は明らかになっていない。

具体的データ


[その他]
研究課題名 : クロロ安息香酸分解菌等の分解遺伝子群の構造と機能の解析技術の開発
(クロロ安息香酸分解菌等の分解能解析技術の解析)
予算区分 : 運営費交付金
研究期間 : 2005年度(2001〜2005年度)
研究担当者 : 酒井順子,小川直人,藤井毅,長谷部亮(現農水省)
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