雑草群落に混生する野生化したアブラナ属植物の種間交雑種子の検出


[要約]
フローサイトメトリーによるスクリーニングとRAPDマーカーを用いて,セイヨウナタネ在来ナタネ,セイヨウカラシナが混生する雑草群落において,セイヨウナタネと在来ナタネとの間に,低頻度ながら相互に交雑があることを国内で初めて確認した。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 生物環境安全部 組換え体チーム
[分類]学術

[背景・ねらい]
 ほ場から逸出した遺伝子組換えナタネ(セイヨウナタネ;Brassica napus)個体やこぼれ落ち種子に由来する個体が,周囲に生育する野生化した非組換え体ならびに近縁野生種と交雑し,導入遺伝子が拡散することが指摘されている。本研究では,遺伝子組換えナタネから野生化した近縁種の在来ナタネ(B. rapa)やセイヨウカラシナ (B. juncea)への遺伝子流動の可能性を推定するために,フローサイトメトリー(FCM)による相対DNA量の比較とRAPDマーカーを用いて,雑草群落に混生する非組換えアブラナ属植物の種間交雑種子の形成についての現地調査とその識別を目的とする。
[成果の内容・特徴]
  1. 外部形態により識別した雑草群落中に混生するアブラナ属3種(在来ナタネ,セイヨウナタネ,セイヨウカラシナ)を,各個体の葉身を用いてFCMによる相対DNA量を測定した。その結果,3種の相対DNA量の平均値は種ごとに異なり,その範囲に重複が認められず,外部形態による種の識別と相対DNA量値はよく一致した(表1)。
  2. 交雑個体の判別のために,複数のRAPDマーカーの有無によりアブラナ属栽培品種の識別が可能であることを明らかにしたが(図1),このことを人工交配によって得られた種間雑種が,両交配親の持つRAPDマーカーを保持することから追認した。
  3. 雑草群落に混生するアブラナ属植物についてRAPD解析を行った結果,RAPD法で同定した種は,外部形態及びFCMで同定した種と一致した(表2)。雑草群落個体から採取した種子をRAPD法およびFCMで解析した結果,在来ナタネ個体からセイヨウナタネを花粉親とする交雑種子1個(検出率0.4%)およびセイヨウナタネ個体から在来ナタネを花粉親とする交雑種子1個(検出率0.8%)を国内で初めて検出した。また,本研究の調査ではセイヨウナタネとセイヨウカラシナとの交雑種子は検出されなかった(表3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 今後,セイヨウナタネからの遺伝子流動の実態を明らかにするためには,野外での交雑個体の分布状況や個体群の更新に関する生態的調査が必要である。
  2. セイヨウナタネとセイヨウカラシナとの自然交雑例は報告されているが,両種の相対DNA量は近似しているため,FCMのみで両者間の交雑個体,あるいはそれぞれの種と在来ナタネとの交雑個体の花粉親を確定することは不十分である。この場合は,複数のRAPDマーカーを組み合わせた解析による花粉親の判定が必要となる。

具体的データ


[その他]
研究課題名 : 組換え体植物の開放系での利用に伴う遺伝子拡散のリスク評価のための基礎的研究
(遺伝子組換え作物の栽培が農業生態系における生物相に及ぼす影響評価並びに導入遺伝子の拡散に関する遺伝学的解析手法の開発と遺伝子拡散の実態解明)
予算区分  : バイテク先端技術[組換え生物総合研究]
研究期間  : 2005年度(1999〜2003年度)
研究担当者 : 松尾和人,小林俊弘(現理化学研究所),田部井豊(生物資源研究所), 堀元栄枝(現佐賀大学),伊藤一幸(現国際農林水産業研究センター)
発表論文等
1)松尾ら,研究成果428,161-168(2005)
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