130年にわたって採集された微生物さく葉標本の目録の作成と公開


[要約]
農業環境技術研究所に保存されている1876年以降に採集された微生物さく葉標本7204点の目録を作成した。タイプ標本,菌学者Sydow氏らの標本,一般さく葉標本など菌種365属1477種,寄主植物621属1322種の標本情報が収録されている。 
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 農業環境インベントリーセンター 微生物分類研究室
[分類] 学術

[背景・ねらい]
糸状菌(かび)の分類研究では,標本は不可欠である。特に植物に寄生するかびの新種記載時には,かびが寄生した植物葉の乾燥押葉などをさく葉標本として標本館で保管する必要がある。農業環境技術研究所には,旧農商務省農事試験場時代の明治期から数多くの微生物標本が収められている。しかし,今までこれら微生物標本の目録はなく、標本の有効活用のための支障となっていた。そこで,標本館所蔵の全微生物さく葉標本の目録を作成しWeb上で公開した。
[成果の内容・特徴]
  1. 1876年以降に収集され農業環境技術研究所に保存されている微生物さく葉標本7204点に関する,菌種365属1477種,寄主植物621属1322種の目録を作成した。本目録には,タイプ標本類,Sydow氏ら標本,一般さく葉標本など(表1,図1)について,微生物種名,異名,病名,寄主植物和名,学名,採集地,採集年月日および採集者などの基本標本情報が収録され,Web (http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/inventry/microorg/specimen/index.html)で公開されている(図2)。
  2. 「タイプ標本類」には,正基準標本(ホロタイプ)13点と,正基準標本とともに指定された副基準標本(アイソタイプ)2点,および重複標本(パラタイプ)1点が収録されている。
  3. P.Sydow氏,N.G.Lagerheim氏ら著名な菌学者によって,スウェーデン,ドイツ,オーストリアなどで収集された野草類のクロボ菌およびさび菌の標本を「Sydow氏ら標本」として収録した。
  4. 「一般さく葉標本」は,主として日本で採集された微生物乾燥さく葉標本で,これらを宿主植物学名のアルファベット順,同一植物では寄生する微生物の学名のアルファベット順に収録した。植物分類学者である牧野富太郎氏が収集した微生物標本7点も含まれ,特に,標本数の多いものとして堀正太郎氏(元農事試験場)の標本(659点)などがある。
  5. 「日野氏ブラジル採集標本」は、日野稔彦氏(元農業技術研究所)が1974-1975年にブラジルのルイス・デ・ケイロス農学校(ESLAQ)に滞在中、その周辺地域で採集した標本(196点)である。
  6. 「キノコ類標本」は,1957-1965年に国内で採集されたもので,学名のアルファベット順に収録した。
[成果の活用面・留意点]
  1. 糸状菌などの微生物の分類には標本は不可欠であり,本目録は糸状菌の分類研究に貢献する。
  2. 一般標本については旧地名が記載されていることもあり,パケット(標本袋)に記載されたままの地名を収録し,現在の地名には変換していない。このため,一般標本とSydow氏らの採集標本などの採集地名は,牧野標本館(首都大学東京)の例に従い「ラベル地名(原記載を加工せずにそのまま記載したもの)」欄を作成し掲載した。

具体的データ


[その他]
研究課題名 : イネ科植物における常在微生物の所在,特性及び遺伝情報のデータベース化とインベントリーのためのフレームの構築
(主要イネ科植物に常在する微生物相の分類・同定と機能の解析及びインベントリーフレームの構築)
予算区分  : 運営費交付金
研究期間  : 2005年度(2001〜2005年度)
研究担当者 : 對馬誠也,小板橋基夫,吉田重信,田村季実子,月星隆雄(花き研),篠原弘亮(東北農研)
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