農業環境技術研究所 刊行物 研究成果情報 平成18年度 (第23集)

主要研究成果 2

小笠原父島に生育する樹木葉のアレロパシー活性の検定

[要約]
小笠原父島に生育する50種の植物のアレロパシー活性をサンドイッチ法によって検定しました。全ての外来種のアレロパシー活性が強いというわけではありませんが、現在、小笠原で蔓延して問題となっているアカギ、ギンネムには最も強い活性がありました。
[背景と目的]
 特定外来生物被害防止法が2005年6月から施行され、駆除対象とすべき外来植物(明治元年以降に入った植物)について緊急調査が必要とされています。そこで、外来植物の実態把握と生態系影響評価・リスク評価を行い、駆除対象とするべき植物を指定する必要があります。とくに、過去に大陸と陸続きになったことのない小笠原諸島のような海洋島には多くの固有種が生息し独特の生態系を形成しているので、侵略的外来種による生態系への影響が大きいといわれています。そこで、小笠原に生育する植物について、葉から出る物質のアレロパシー活性を調べるサンドイッチ法で検定しました。
[成果の内容]
  1. 小笠原父島の中央山東平にある乾生低木林で採集した50種の樹木葉を材料としました。この森林は小笠原諸島の固有種が最も集中している多様性の高い場所であり、検定した植物は、小笠原のほとんどすべての構成種を含んでいます。
  2. 50種の植物のアレロパシー活性をサンドイッチ法(農業環境技術研究所成果情報第14集)で検定した結果(表1)、最も強い活性を持っているのはギンネムであり、アカギがこれに次ぐ活性を示しました。この2種はともに明治以降に材木用として小笠原に導入された樹種ですが、侵略性が強く、現在では島全体に蔓延して問題となっています。小笠原父島におけるギンネムやアカギ蔓延の原因のひとつに、そのアレロパシー活性の強いことが考えられます。
  3. ムニンノキとシマホルトノキには、レタス胚軸の生長を阻害する強い活性があり、強い生理活性物質が含まれている可能性があります。
  4. モクマオウが純林を形成し林床の植生も貧弱である理由として、これまでアレロパシーの存在が考えられていましたが、サンドイッチ法では強い活性がありませんでした。
  5. 小笠原固有種の中では、シロテツ属の3種(シロテツ、アツバシロテツ、オオバシロテツ)が高いアレロパシー活性を示しました。シロテツ属は小笠原の固有属であり、古い系統です。この他に比較的個体数の多いテリハハマボウ、シマホルトノキ、アカテツ、シマシャリンバイ、ムニンヒメツバキなどでアレロパシーが強い傾向が見られました。
  6. ムニンフトモモも比較的強いアレロパシー活性を示しました。この樹木は古い時代に小笠原に渡来した植物で、ポリネシア諸島で森林の優占種となっています。
本研究は文部科学省科学技術振興調整費重要課題解決型プロジェクト「外来植物のリスク評価と蔓延防止策」による成果です。

リサーチプロジェクト名:外来生物生態影響リサーチプロジェクト

研究担当者:生物多様性研究領域 藤井義晴、平舘俊太郎、清水善和(駒沢大)

発表論文等:1)Fujii et al. Weed Biol. Manage., 4(1), 19-23 (2004)



図表

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