農業環境技術研究所 刊行物 研究成果情報 平成18年度 (第23集)

主要研究成果 5

ほ場で遺伝子組換えダイズとツルマメが
交雑する可能性は低い

[要約]
除草剤耐性遺伝子組換えダイズとツルマメがほ場条件下で自然に交雑するかを検討するため、交雑しやすい条件で両種を栽培した結果、32,502個のツルマメ種子の中から遺伝子組換えダイズと交雑した1個の種子を確認しました。このことから、両種がほ場で交雑する可能性は極めて低いことがわかりました。
[背景と目的]
 日本を含む東アジアで除草剤グリホサート耐性遺伝子組換えダイズ(以下組換えダイズ)が商業栽培された場合、周囲に自生するダイズの近縁野生種であるツルマメと交雑する可能性があります。しかし、ダイズやツルマメは自家受精によって種子を作る植物であり、開花時期も異なります。そのため、一般に組換えダイズとツルマメとの自然交雑は起こりにくいと考えられ、今のところ自然交雑したという報告はありません。本研究では、ほ場において両者が交雑しやすい条件で栽培し、自然交雑するかどうかを検討しました。
[成果の内容]
 野外の研究ほ場において、組換えダイズ(40-3-2系統)とツルマメを隣接して栽培し、夏季にはつる性のツルマメは組換えダイズに巻きついた状態となりました(図1)。開花期を重複させるため組換えダイズの播種日を3回に分けました。その結果、25〜32日間開花が重複し、組換えダイズを7月20日に播種した組合せで両種の開花最盛期は、最も近くなりました(図2)。
 収穫したツルマメの種子について合計32,502個を検定したところ、1個の種子が組換えダイズと交雑していました。この交雑種子は、開花最盛期が最も近かった組合せのツルマメ種子11,860個の中から見つかりました()。この交雑種子を栽培し、得られた莢と種子の大きさは中間的で、種子の色は大部分が茶褐色でこれも中間的でした(図3)。
 これまで遺伝子組換えでないダイズとツルマメの自然交雑についての報告はありますが、組換えダイズを用いた例は世界で初めてです。この結果は、日本で組換えダイズが栽培された場合、周辺に自生するツルマメと自然交雑する可能性を示すものです。しかし、この実験のように人為的に両種の開花期を重複させた上、極めて近接して栽培しても、交雑種子は1個であることから、ツルマメと組換えダイズが自然に交雑する可能性は極めて低いことが明らかとなりました。
本研究成果は、農林水産省バイテク先端技術「組換え生物総合研究」による成果です。

リサーチプロジェクト名:遺伝子組換え生物生態影響リサーチプロジェクト

研究担当者:生物多様性研究領域 吉村泰幸、水口亜樹、松尾和人

図表

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