農業環境技術研究所 刊行物 研究成果情報 平成18年度 (第23集)

主要研究成果 9

ソバ粗抽出液に含まれる主要な植物生長阻害成分はルチン

[要約]
 ソバには周囲の雑草の生長を強く阻害する、いわゆるアレロパシー活性があります。ソバの植物体から抽出した溶液中に含まれる各種植物成長阻害物質の量と性質を調べた結果、フェノール性物質の一種であるルチンがアレロパシー活性の原因物質であることを突き止めました。
[背景と目的]
ソバは、現場で雑草抑制作用が強く(農業環境研究成果情報第20集p.38、写真1)、植物生長阻害物質として、カテコール構造を持つフェノール性物質や特有のアルカロイドを持つことが報告されていますが、どの物質が植物生長阻害の本体であるか不明でした。そこでこれまでに報告のある主要な物質の植物体中の濃度と活性を検定・評価して、粗抽出液中での主要な阻害因子を調べました。
[成果の内容]
  1. ソバに含まれる植物生長阻害物質としてこれまでに報告のある主要なフェノール性物質(ルチン、ケルセチン、クロロゲン酸、カフェー酸、フェルラ酸、没食子酸、(+)-カテキン、(-)-エピカテキン)の、ソバの植物体中における含有量を分析した結果、ルチンが、葉・花・茎のいずれにおいても、最も多く含まれていました(表1)。
  2. ソバの粗抽出液中に含まれる各フェノール性物質の比活性(EC50:生長を50%阻害する濃度)を、純物質を用いて検定した結果、没食子酸が最も高い比活性を示し、カフェー酸がこれに次ぎました(表2)。
  3. 植物体内のそれぞれの生理活性物質の濃度(C)を比活性(EC50)で割った値を全活性と定義しました。濃度は高いほど、比活性は小さいほど活性が強いので、濃度を比活性で割ることで求められる全活性は、値が大きいほど活性が強いことを示します。全活性は、それぞれの物質の阻害活性に植物体中のその物質の濃度を加味した値であり、どの物質が最も全体の阻害活性に寄与しているのかを示す尺度となります。各成分の全活性を計算した結果、ルチンがずば抜けて高い値を示しました(表2)。
  4. ソバの葉の粗抽出液が示すレタス生長阻害活性の図に、この粗抽出液中に含まれる各成分の濃度から換算したそれぞれの成分が示す阻害活性を上書きした図を作成した結果、粗抽出液の示す阻害活性は、含まれるルチンでほぼ100%説明できた(図1)ので、ルチンが阻害活性の本体と結論しました。

リサーチプロジェクト名:情報化学物質リサーチプロジェクト

研究担当者:生物多様性研究領域 藤井義晴、平舘俊太郎、古林章弘,Zahida Iqbal, Habib Nasir, Anna Golisz

発表論文等:1)Hiradate, S., In Natural Products for Pest Management, A.M. Rimando and S.O. Duke, ACS Symposium Series 927, 113-126. 2006

      2)Golisz, A. et al., Weed Biology and Management, 50(s), 188-189, 2006.

図表

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