農業環境技術研究所 刊行物 研究成果情報 平成18年度 (第23集)

主要研究成果 15

土壌及び作物中のフェニル置換ヒ素化合物の定量法

[要約]
土壌・作物に含まれるフェニル置換ヒ素化合物の定量方法を確立しました。これにより環境中での化学形態の変化や作物への移行が明らかになり、有機ヒ素のリスク評価に役立てることができます。
[背景と目的]
 茨城県旧神栖町で自然界には存在しないフェニル置換ヒ素化合物が地下水から検出されていますが、環境中での化学形態変化や作物への取り込みについてはっきりと分かっていません。また、有機ヒ素系化学兵器が過去に遺棄された地域において今後大きな問題となる可能性があります。そこで分析が困難な土壌と作物について、これら有機ヒ素の分析法を確立することを目的としました。
[成果の内容]
 逆相クロマトグラフィー*1と誘導結合プラズマ質量分析装置*2を用いた分析により、水溶性の無機ヒ素である亜ヒ酸[As(III)]及びヒ酸[As(V)]から疎水性の高いフェニル置換ヒ素化合物まで一度に定量できるようになりました(図1)。
 土壌中に含まれるヒ素の全量は硝酸−フッ酸−過酸化水素による酸分解により有機ヒ素を完全に無機化した後、逆相クロマトグラフにより土壌中の分析妨害元素と無機ヒ素を分離することで正確に定量可能となります(図2)。土壌に含まれる有機ヒ素はアルカリにより抽出できますが、熱濃硝酸を用いると無機ヒ素も含めて効率よく抽出することができます。
 作物に含まれるヒ素化合物は稲わら、玄米からの抽出によく用いられる50%メタノールによる振とう抽出では不十分で、トリフルオロ酢酸あるいは熱濃硝酸を用いて無機ヒ素、有機ヒ素共に効率良く抽出できます。本方法で分析したところ、土壌と作物(イネ)では含まれるフェニル置換ヒ素化合物の種類が異なることが明らかになりました(図3)。
 本分析法により、土壌、作物に含まれる有機ヒ素化合物の濃度と種類が明らかになり、有機ヒ素のリスク評価に大きく貢献します。さらに本分析法を利用し汚染土壌中での化学形態の変化や作物への取り込みについての研究も進めています。
*1 化学物質をその疎水性の高さに応じて分離する手法
*2 プラズマ中で化学物質を原子化し、含まれる元素の種類と量を調べる装置
本研究は環境省公害防止プロジェクト費「有機ヒ素」による成果です。

リサーチプロジェクト名:有機化学物質リスク評価・重金属リスク管理リサーチプロジェクト

研究担当者:有機化学研究領域 馬場 浩司、土壌環境研究領域 荒尾 知人、前島 勇治

図表

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