農業環境技術研究所 刊行物 研究成果情報 平成18年度 (第23集)

主要研究成果 17

日本の全流域圏・農耕地を網羅する
農業生態系空間情報解析システム

[要約]
圃場境界に沿った1区画数haの農地区画(セル)を単位として、自然立地・圃場基盤・作付現況等に関するデータを一元的に集積・管理し、総合的に活用する汎用の空間情報システムを構築しました。わが国の全農耕地を対象に、任意の流域界・行政界や任意の形・サイズの領域を選定し、解析やシミュレーションを行うことができます。
[背景と目的]
 自然と調和した農業生態系管理のためには、農耕地の生産機能とともに生態的役割や環境負荷を、自然立地条件および土地利用・水利・作物栽培状況などの異なる地域空間の中で総合的にとらえることが不可欠です。そこで、地理情報システム(GIS)を活用して、衛星画像やセンサスを含む農耕地・環境に関わる多様な情報を高い空間解像度で一元的に集積・管理し、それによって流域圏スケールで問題を把握・評価・予測するための汎用的な空間情報プラットフォームの開発を目指しました。
[成果の内容]
 わが国の全流域圏・全農耕地をカバーする汎用的な農業生態系空間情報解析システム(GSAS)を完成しました(図1)。GSASはつぎのような特徴を持っています。(1)全国全流域圏の全農耕地をカバーする、 (2)圃場境界に沿った1区画約数haの農地区画(セル)を基本的なデータ集積単位とする、(3)自然立地データ(標高・傾斜・気温・降水量・土壌等)、圃場基盤データ(用排水条件・田畑面積等)、統計調査データ等を総合的に集積、(4)流域界だけでなく行政界等一般地図情報を含む、(5)解析目的に適した任意の衛星画像等を取込んで現況画像情報(作付状態・植生指数等)をセル毎の属性データとして集積することが可能、(6)シミュレーション結果をセルごとに追加し、自己増殖する。
 これにより、全国の任意の河川流域界・行政界、任意の形状・サイズや検索条件で選択した領域などを選択し、抽出したセルの属性データに基づいた諸変量のスケーリングアップ・ダウンやシミュレーションを行うことが可能となりました(図2)。
 自然と調和し環境負荷の少ない流域圏管理法を構築する上で、農業の水質への影響は最重要項目のひとつです。GSASは施肥窒素の地下水質に対する簡易・広域影響評価(図3に試算図を例示)などに適用され、その機能を発揮します。
 このシステムは、農耕地の作物生産機能や生態的役割、環境負荷など、農業と環境に関わる諸問題の空間的な把握・分析・予測に有用で、それによる意思決定や改善シナリオ策定の支援など多くの場面に貢献します。汎用的な空間情報プラットフォームとして、多方面の共同研究等への活用が可能です。
本研究は農林水産省委託研究費「自然共生」による成果です。

リサーチプロジェクト名:農業空間情報リサーチプロジェクト

研究担当者:生態系計測研究領域 井上吉雄

発表論文等:1) 井上ら、日本リモートセンシング学会37回学術講演会論文集:11-12(2004)

      2) Inoue, Y., Future Development of Environmental Restoration Technologies:13-15(2006)

図表

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