農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

普及に移しうる成果 2

環境への負荷がより小さい低濃度エタノールを用いた
低コストの新規土壌消毒法

[要約]
本土壌消毒技術は、エタノールを水で2%程度に薄めて畑土壌が湛水状態になるまでかん水処理した後、農業用ポリエチレンフィルムで土壌表面を覆い、1週間以上放置するという簡便な技術であり、臭化メチルの代替技術として実用化が期待されます。
[背景と目的]
わが国では、農耕地における連作に伴って発生する土壌病害虫を防除するため、臭化メチルによる土壌くん蒸消毒が広く行われてきました。しかし、臭化メチルはオゾン層破壊物質であるため、モントリオール議定書締約国会議において、代替不可能な用途を除いて2005年に使用が禁止されました。このため、臭化メチルに替わり得る防除効果を有し、経済的にも実行可能な新規代替技術の開発が早急に求められています。
[成果の内容]
 本土壌消毒法は、アルコール(エタノール)を水で2%程度に薄めて、畑土壌が湛水状態になるまでかん水処理した後、農業用ポリエチレンフィルムで土壌表面を覆い、1週間以上放置する(図1)という簡便な技術です。本土壌消毒方法で用いる2%程度の低濃度エタノール水溶液では、エタノールによる殺菌・殺虫などの直接的な防除効果は期待できませんが、これまでに、細菌、糸状菌、線虫、土壌害虫など広い範囲の土壌病害虫や雑草に対し、防除効果が確認されています(図2表1)。本技術が土壌病害虫などの防除に有効な理由については、今後解析が必要ですが、本技術により、土壌中の環境が酸化(好気的)状態から還元(嫌気的)状態に変化すること、有機酸濃度が増加することなどが観察されており、これらが要因として考えられます。
 原料アルコールは、年間約36万キロリットルが輸入され、価格は50〜60円/リットルです。原料アルコールの蒸留精製過程で、高濃度エタノールを含有した副生アルコールが1%程度生じています。この副産物を原料アルコールの替わりに利用することで、低コスト化が期待されます。
 エタノールは、土壌中では数日で分解消失しますので、環境への負荷が小さく、安全性の高い技術であると考えられます。フスマや糖蜜を用いた土壌還元消毒法が実施されていますが、至適温度条件、臭気などの問題点があり、適用が制約されることがありました。本技術では、これらの問題点が改善されます。
 本技術は、関係機関と相談しながら、実用化に取り組んでいるところです。
リサーチプロジェクト名:有機化学物質リスク評価リサーチプロジェクト
研究担当者:有機化学物質研究領域 小原裕三、植松清次・田中千華(千葉県農総研セ 暖地園芸研究所)、
      佐藤理恵子・*佐藤充克(日本アルコール産業株式会社)
      *現 山梨大工学部附属ワイン科学研究センター
特許:小原ら、国際出願PCT/JP2007/000472(2007)

図表

図表

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