農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

普及に移しうる成果 6

葉の表面に棲む生分解性プラスチック分解酵母

[要約]
各種の葉の表面には、生分解性プラスチック(生プラ)を効率よく分解する酵母が多数生息していることがわかりました。今回分離したPseudozyma属酵母の生プラ分解酵素は、各種生プラと、植物由来のポリ乳酸を分解します。
[背景と目的]
農業用プラスチックフィルムの廃棄量と農作業軽減のために、生プラの導入が勧められています。冬は生プラ分解が起きにくいので、強力な分解菌を利用した分解促進技術が必要です。しかし、土壌から効率よく分解菌を分離する方法は開発されていません。そこで、葉の表面構造が生プラと似ていることに着目した結果、葉から効率よく分解菌(酵母: Pseudozyma antarctica)を分離することができました。
[成果の内容]
  1. 葉の表面から抽出した微生物の中から、生プラを分解する酵母を効率よく分離することができます。分離方法は、はじめに生プラエマルジョンと油を含む培地の上に葉の抽出液を塗りつけ、エマルジョンを溶かす株を選びます。次に分離した菌を同じ培地の表面に塗布し、その上に生プラ製マルチフィルムを付着させて、継時的にフィルムの残存量を観察することで、分解力を判定します。
  2. イネの葉や籾から分解菌(Pseudozyma antarctica)が効率よく分離されました。
  3. 分解菌P.antarcticaの培養液には分解酵素が分泌され、その酵素は、生プラ[(ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート/アジペート(PBSA)、ポリカプロラクトン(PCL)]だけでなく、常温では生分解が難しい植物由来のプラスチックであるポリ乳酸(PLA)も、常温で分解します。
本研究は、運営費交付金、および科学技術振興機構(JST)地域イノベーション創出総合支援事業「シーズ発掘試験」による成果です。
リサーチプロジェクト名:情報化学物質生態機能リサーチプロジェクト
研究担当者:生物生態機能研究領域  北本宏子、小板橋基夫、對馬誠也、藤井毅
発表論文等:北本ら、特願2008-023030号(2008)

図表

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