農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

普及に移しうる成果 8

温室効果ガス3成分自動同時分析計の開発

[要約]
試料ガスを1回自動注入することによって、温室効果ガス3成分(CO2、CH4、N2O)を同時に計測できる新たな分析計を開発しました。同時計測は、CH4、CO2とN2Oを完全に分離するための新たな充填剤の導入とそれぞれのガスを検出するためのキャリヤーガスを共通化することで実現しました。
[背景と目的]
2008年から始まった京都議定書第一約束期間に、農地、林地をはじめとする陸上生態系から発生する温室効果ガスの排出量を削減する必要に迫られています。この削減対策のためには、高感度かつ高頻度のガス測定法が必要ですが、これまで温室効果ガス3成分(CO2、CH4、N2O)を同時に計測できる方法はなく、また、ガス試料の注入も手動でした。本研究の目的は、これら温室効果ガス3成分を自動で同時に測定できる分析計を開発することです。
[成果の内容]
 温室効果ガス3成分(CO2、CH4、N2O)を同時に計測するガス分析計を開発しました。
 同時分析については、装置流路図(図1)中央に示すとおり、まず3段階のガス分離の第2段に分離能の高い充填剤(Unibeads C、GLサイエンス社製)を採用することで、これまで困難とされたCH4、CO2とN2Oの完全分離を実現しました。次に、CO2の高感度検出のために、従来はヘリウムを、N2Oの検出のためにはアルゴン(5%メタン混合)をキャリヤーガスとして用いていました。しかしながら、本研究では、ECDセル内でヘリウムに窒素とメタンの混合ガスをメークアップガスとして添加することで、従来法と同等のN2Oの検出感度を得るとともに、N2OとCO2の同時分析を可能にしました。1回の試料注入で3成分を同時に計測できるので、3成分を別々に測定する場合に比べて注入量による誤差が生じないこともメリットの1つです。3成分の繰り返し分析精度も従来法と同等です。
 試料注入については、既存のヘッドスペースサンプラー(HSS-2B、島津製作所)を改造し、高精度ガスタイトシリンジ(容量2ml、Valco社)を装着した自動注入器を開発しました。シリンジの針を高気密性のブチルゴム栓に貫通させるために、円錐形のガイドラインを新たに製作しました。この自動注入器により、最大40試料を、1試料あたり10分で自動分析できます。
 本分析計(図2)には、特定メーカーの検出器およびガスクロマトグラフを使用していますが、他社の製品を利用して製作することも可能です。本分析計の普及により、温室効果ガス計測の頻度と精度が大幅に向上することが期待されます。
リサーチプロジェクト名:温室効果ガスリサーチプロジェクト
研究担当者:物質循環研究領域 須藤重人
発表論文等: 1) 須藤、特願2005-96918 号(2005)
       2) 須藤、日刊工業新聞(平成19年2月1日掲載記事)

図表

図表

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