農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

主要研究成果 4

要注意外来植物ハリエンジュにもシアナミドが含まれる

[要約]
553種植物についてシアナミド含有量を調べた結果、既報告のヘアリーベッチ以外にはハリエンジュとクサフジにのみ含まれていました。ハリエンジュでは植物全体に含まれていました。ハリエンジュの植物生育阻害作用はシアナミドによるものでした。
[背景と目的]
外来植物のリスクを評価する上で、含まれる有害成分の研究や生態系への評価が必要です。植物・昆虫・微生物の生育阻害活性があり、石灰窒素の成分として知られるシアナミドがヘアリーベッチで生成されることを明らかにしましたが、その植物界における分布は不明でした。そこで、131科340属452種の維管束植物と101種のシダ植物における分布を明らかにしました。
[成果の内容]
  1. つくば実験植物園において、131科340属452種の維管束植物と101種のシダ植物、計553種の葉を、それぞれの生育最盛期に採取し、農環研で開発したシアナミドを特異的に定量する「同位体希釈法」(農業環境研究成果情報第22集:平舘ら、2005)により分析した結果、マメ科ソラマメ属のヘアリーベッチ(Vicia villosa)と、クサフジ(Vicia cracca)に含まれていました。しかし、ナンテンハギ、ツルフジバナカ、ソラマメ、カラスノエンドウなど、ヘアリーベッチとクサフジ以外のソラマメ属(Vicia)には含まれていませんでした(表1)。
  2. 環境省の要注意外来生物に選ばれているマメ科ハリエンジュ属のハリエンジュ(ニセアカシア)(Robinia pseudo-acacia)にもシアナミドが含まれていました(表1)。これまでにハリエンジュに含まれることを報告したロビネチンや(+)-カテキンよりもシアナミド方が、植物生育阻害活性への寄与が高いことが判明しました。なお、ハリエンジュと同属のRobinia luxuriansにはシアナミドは含まれていませんでした。
  3. シアナミドの含有量は季節変動し、開花期に高くなりました(図1)。日本在来種であるクサフジが最も多く、500〜3500mg/kg生葉であり、外来植物であるヘアリーベッチとハリエンジュが200〜600mg/kgでした。
本研究の一部は、文部科学省科学技術振興調整費「外来植物のリスク評価と蔓延防止策」による成果です。
リサーチプロジェクト名:外来生物生態影響リサーチプロジェクト
研究担当者:生物多様性研究領域 藤井義晴、平舘俊太郎、山谷紘子、加茂綱嗣(信州大)
発表論文等:1) Kamo et al., Phytochemistry, 69: 1166-1172 (2008)
      2) Hiradate et al., Journal of Chromatography A, 1098: 138-143 (2005)

図表

図表

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