農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

主要研究成果 6

簡易型雑草リスク評価法の提案とこれによるリスク評価

[要約]
新たに導入が予想される外来植物やワイルドフラワー約600種の雑草性リスクを、FAO雑草リスク評価式を改良し、寄与の低い寄生性など3項目を除外し、寄与の高い他感作用を加えた10因子で計算した結果、ツノアイアシ等の危険雑草を検出しました。
[背景と目的]
牧草やワイルドフラワーとして新たに導入が予想される植物のリスクを簡便に評価する必要があります。オーストラリア等では精密なリスク評価法を確立していますが、国際連合食糧農業機構(FAO)は2005年に13因子で評価する方法を発表し、合計が6点以上を危険としています。新たに導入される植物のリスクはまず簡便に評価して警告する必要があると考えられますので、このFAO方式を元に、評価法を改良し、新たに導入する600種の植物について評価しました。
[成果の内容]
  1. FAO評価法に他感作用の因子を加え、環境省の提案する「要注意外来生物」にあてはめ、各因子の寄与率を相関係数で解析した結果(表1)、寄生性等の3因子は寄与が低くアレロパシーは寄与が大であることが分かりました。そこで、寄与の低い3因子を省き、有害物質として2回評価されている「草食動物に有毒」と「人に有害か皮膚炎・花粉症」を合併して10因子にした簡易型雑草リスク評価法(SWRA)を提案しました。
  2. 簡易型雑草リスク評価法で、既に環境省により指定されている「特定外来生物」、「要注意外来植物」にあげられている植物を再評価した結果、蔓延の激しい特定外来生物のボタンウキクサ、ミズヒマワリ、ブラジルチドメグサで高い点数が得られましたが、ほとんど広がっていないナルトサワギクは低い点数でした。要注意外来生物では、オオサンショウモ、ホテイアオイ、ギンネム、キシュウスズメノヒエ、ハリエンジュ、オオカナダモ、コカナダモのリスクが高いという結果が出ました(表2)。これらの植物は既に各地で急速に蔓延しつつあり、注意が必要です。
  3. 新たに導入される可能性のある外来植物500種と外来のワイルドフラワー100種の雑草化リスクを、簡易型雑草リスク評価法で評価した結果(表2)、未侵入のツノアイアシ、ナンバンアカアズキ、ヒゲナガスズメノチャヒキ等も高リスクであり、今後これらが侵入しないように十分注意が必要です。
本研究の一部は、文部科学省科学技術振興調整費「外来植物のリスク評価と蔓延防止策」による成果です。
リサーチプロジェクト名:外来生物生態影響リサーチプロジェクト
研究担当者:生物多様性研究領域  藤井義晴、平舘俊太郎
発表論文等:藤井義晴、外来生物のリスク管理と有効利用、養賢堂、19-59 (2008)

図表

図表

目次へ戻る   このページのPDF版へ