農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

主要研究成果 14

水田からのメタン発生量を推定する数理モデル・DNDC Riceの開発

[要約]
水田の稲わら処理方法や肥料の種類によるメタン発生量の変化をコンピュータで推定できる数理モデル(DNDC Rice)を開発しました。このモデルを活用することにより、水田からのメタン発生量とその削減ポテンシャルを広域評価することが可能になります。
[背景と目的]
メタンは二酸化炭素の20倍以上の温室効果を持つガスですが、全世界のメタン発生量の約1割が水田に由来すると考えられています。水田から発生するメタンを減らすためには「どうすれば、メタンがどれだけ減るのか」を精度良く推定することが重要です。そこで、DNDCという数理モデルを改良して新たなモデル(DNDC Rice)を開発し、稲わらの処理方法や肥料の種類によるメタン発生量の変化について検証しました。
[成果の内容]
 水田の土壌に棲むメタン生成菌によってメタンが作られますが、その発生量は土壌の性質やイネの栽培方法などによって変わります。水田に稲わらをすき込むと分解されてメタン生成菌のエネルギー源を供給するため、メタンの発生量が増加します。一方、土壌中の鉄酸化物や肥料の硫安に含まれる硫酸塩にはメタンの発生を抑制する作用があります。この研究ではDNDCという数理モデルを改良し、これらの作用を定量的に計算して、メタン発生量を推定できるモデル(DNDC Rice)を開発しました(図1)。
 日本と中国の3地点(つくば市、北海道比布町、南京市)の水田で行われたほ場実験で得られた観測値を用いて、DNDC Riceがメタン発生量を正しく推定できるかどうか確かめました。ほ場実験では、稲わらすき込みの有無や時期、肥料の種類によって、イネ栽培期間のメタン発生量が2〜17gm-2の範囲で変化することが観測されました。これらの観測値についてDNDC Riceでシミュレーションを行ったところ、従来のDNDCモデルでは不十分だった稲わらの処理方法や肥料の種類の影響の推定精度が改善され、メタン発生量の観測値に対する平均誤差は4gm-2以下でした(図2)。
 このように、DNDC Riceは水田の稲わら処理方法や肥料の種類によるメタン発生量の変化を精度良く推定できます。したがって、DNDC Riceを用いることで水田からのメタン発生量とその削減ポテンシャルを広域評価することが可能になり、農耕地からの温室効果ガス発生量を削減するための効果的なメタン削減計画立案に貢献できます。今後、さらに水管理によるメタン発生量の変化を推定できるように、モデルの検証と改良を行う計画です。
本研究は、環境省地球環境研究総合推進費S2-3a「農業生態系におけるCH4、N2Oソース抑制技術の開発と評価」および環境省地球環境保全試験研究費「温暖化と大気CO2増加が農業生態系に及ぼす影響のプロセスモデリング」による成果です。
リサーチプロジェクト名:温室効果ガスリサーチプロジェクト
研究担当者:物質循環研究領域 麓多門、八木一行、大気環境研究領域 長谷川利拡
発表論文等:Fumoto et al., Global Change Biology, 14: 382-402 (2008)

図表

図表

図表

目次へ戻る このページのPDF版へ