農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成20年度(第25集)

普及に移しうる成果 7

北海道内の広域で発生した新害虫は
ヘリキスジノメイガだった

[要約]
2008年夏北海道内の広域においてダイズやニンジンなど多種類の作物を加害する見慣れないチョウ目幼虫が多発生しました。羽化させた成虫を詳細に調べたところ、これまでわが国では害虫としての記録がないヘリキスジノメイガであることが分かりました。
[背景と目的]
2008年8月中旬から9月にかけて、石狩・空知・後志・上川・留萌・網走・宗谷支庁管内で、これまで発生を認めたことのないチョウ目幼虫が多種類の作物を加害している事例が確認されました(図1)。発生地域が広く、深刻な被害を受けているほ場も多いことから、早急な同定が求められましたが、幼虫による同定は困難であるため、加害中の幼虫を飼育し、羽化させた成虫によって、種名を同定することにしました。
[成果の内容]
 北海道立中央農業試験場内(夕張郡長沼町)で、2008年8月下旬、作物を加害中の幼虫を採集し(図2)、飼育したところ、同年9月中旬、5個体の成虫(図3左)を羽化させることができました。この羽化成虫の形態を詳細に検討したところ、ツトガ科ヘリキスジノメイガMargaritia sticticalis(Linnaeus)と同定することができました。また、同じ場所の野外に設置されたライトトラップで8月4日から8月30日までに誘殺された本種と思われる530個体の標本を検討したところ、すべて同じヘリキスジノメイガであることが分かりました。他の地域で確認された同じ形態をもつ幼虫も同様に本種であると考えられます。
 本種は、ヨーロッパからロシア、中国、アメリカ、カナダなどの広域に分布する移動性の害虫で、様々な種類の作物に被害を与えることが報告されています。わが国では、これまで成虫の採集記録しかなく、幼虫の発生や作物への加害事例は認められていませんでしたが、今回はじめてダイズ、ニンジン、アズキ、テンサイ、カボチャ、シロクローバー、アルファルファなどへの幼虫の加害が確認されました。
 今回の多発生は、2008年春以降に大陸から北海道へ飛来した成虫に起因する後世代の増殖が原因であると考えられます。本種は、冬季は土中でまゆを作って越冬しますので、それが翌春以降の発生につながる可能性があります。また、成虫は、これまで本州や九州でも採集されていますので、北海道以外においても本種の発生に十分注意する必要があります。
リサーチプロジェクト名:環境資源分類・情報リサーチプロジェクト
研究担当者:農業環境インベントリーセンター 吉松慎一、岩崎暁生(北海道立中央農業試験場)
発表論文等:北海道病害虫防除所、平成20 年度病害虫発生予察情報第18 号特殊報第1 号(2008)

図表


図表


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