農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成21年度 (第26集)

普及に移しうる成果 3

低コストで高精度の気温測定を可能にする強制通風筒

[要約]
気温の測定において、強制通風筒は日射や風雨の影響を低減するために必須の補助装置です。この強制通風筒について、既製の大量生産資材を組み合わせることで、低コストながら卓越した性能を備えた装置を開発しました。簡易な構造のため自作も可能です。
[背景と目的]
近年問題となっている夏季の異常高温による作物の生育障害の現況把握と対策を進めるには、圃場の気温を正確に測定する必要があります。自然通風に依存した百葉箱などでは、弱風下で強い日射を受けると気温が実際より高めに観測される傾向があるため、強制通風筒の使用が不可欠です。しかし、市販の強制通風筒は1台数十万円程度と高価なため利用が限られている一方、自作する場合には測定精度を確保できる構造の検討や、製作の容易さ、仕上がりの均質性が課題でした。
[成果の内容]
開発した強制通風筒「NIAES-09型」(図1)は、建築用の大量生産資材を活用した、低コストながらも卓越した性能をもつ強制通風筒です。主要部は既製の資材をほぼそのまま組み立てた簡易な構造ですので、容易に自作できるうえ、仕上がりも均質です。温度センサ格納部は、強制吸排気(FF)式給湯器の吸排気管として用いられるステンレス二重管の内筒に塩ビ管(ライト管)を挿入した構造になっており、温度センサはライト管内に吊り下げています。温度センサ格納部の上部には汲取式トイレ用換気扇を取付け、温度センサ格納部下端から空気を吸引します。材料費は設置用金具を含めても2万円以下です。
気象庁で現在使用している強制通風筒(JMA-95型)とNIAES-09型とを比較*すると、両者の観測値はよく一致しました(図2左)。日射が強いほどNIAES-09型の観測値がJMA-95型よりも低くなる傾向が認められ、両者の差はおおよそ±0.2℃以内に収まりました(図2右)。高温生育障害が特に問題となる盛夏期には3MJ/(m2h)程度の強い日射が観測されますが、そのような条件でもNIAES-09型はJMA-95型と比較して遜色ない性能を有していることがわかりました。
地球温暖化に関心が集まるなかで、農業生産現場において高温生育障害の現況を把握し、農業試験場等がその対策技術の開発を進めるにあたっては、現場の気温を正確に把握することが基礎となります。NIAES-09型は、市販の温度センサ・ロガーと組み合わせることにより、精度の高い気温測定を安価に実現します。さらに、都市におけるヒートアイランド現象の把握など、気温の正確な測定を必要とする農業以外の幅広い分野においても利用が期待されます。
*NIAES-09型とJMA-95型との性能比較試験は、気象庁観測部観測課気象測器検定試験センターの協力により実施しました。
リサーチプロジェクト名:気候変動影響リサーチプロジェクト
研究担当者:大気環境研究領域 福岡峰彦、桑形恒男、吉本真由美

図表


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