農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成21年度 (第26集)

普及に移しうる成果 4

時別日射量の高精度推定法の開発と日本全域におけるデータセットの作成

[要約]
毎時の日照時間から時別日射量を高精度で推定する手法を開発し、1991年以降の日本全国のアメダス地点における時別日射量のデータセットを作成しました。このデータを利用すれば、農耕地における日射環境を地域ごとに高精度で評価することができます。
[背景と目的]
地球温暖化や異常気象が、農業生産に大きな影響をもたらすことが心配されています。日射量は作物の生育において最も重要な気象要素の一つですが、一般に利用可能なものは、全国で67地点の地上気象観測所(気象庁)における測定データに限られます。そこで、多くの地点で測定されている毎時の日照時間から時別日射量を高精度で推定する手法を新たに開発し、日本全国のアメダス地点(約850地点)における時別日射量のデータセットを作成しました。
[成果の内容]
時別日射量(1時間積算値)の推定値は、毎時の日照時間の測定値と太陽高度角の2次式で表すことができます(式1)。式中の係数A1〜A6は、時別降水量、積雪の有無、日照時間(日積算値と前後1時間の値)のみに依存します。また従来の手法とは違って、大気の汚れや水蒸気量の短・長期的な変化の影響を、必要に応じて考慮することができます。
この推定式を用いれば、日本各地における日射量の日変化を通年にわたり高精度で推定することができます(図1)。時別日射量の推定精度は0.2MJ m-2 h-1前後で(図2左)、従来の手法の推定精度と同等あるいはそれ以上です。また、時別日射量の推定値より得られる日積算日射量の推定精度は約1.5MJ m-2 d-1となり、従来の日別日照時間を用いた推定手法を用いた場合に比べて精度が向上します(図2右)。
今回新たに開発した手法を用いて、日本全国のアメダス地点(約850地点)における、1991年以降の時別日射量(推定値)のデータセットを作成しました。これらデータを利用すれば、農耕地における日射環境を、今までにない高い時間・空間分解能で把握することができます。水田の物理環境モデルと組み合わせることで、水稲の稔実や登熟に影響を及ぼす出穂・開花時刻の穂温を地域ごとに細かく評価することもでき、高温による生育障害の現況把握や対策技術の策定に役立ちます。さらに都市気象環境の詳細な把握や、太陽光発電における利用など、農業以外のさまざまな分野への応用が期待されます。今回作成したデータセットは、モデル結合型作物気象データベース(http://meteocrop.dc.affrc.go.jp/)において公開する予定です。
リサーチプロジェクト名:気候変動影響リサーチプロジェクト
研究担当者:大気環境研究領域 桑形恒男、石郷岡康史、眞崎良光
発表論文等:1) Masaki et al., J. Meteor. Soc. Japan, 87: 849-863 (2009)
2) Masaki et al., Theor. Appl. Climatol., DOI:10.1007/s00704 -009-0191-0 (2009)

図表

図表

図表


目次へ戻る   このページのPDF版へ