農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成21年度 (第26集)

普及に移しうる成果 5

世界の水田からのメタン発生量とその削減可能量の推定

[要約]
IPCCガイドラインに従って、2000年における世界の水田からの年間メタン発生量を算定し、2560万トンであることを明らかにしました。また、間断灌漑の導入と稲わらの管理の改善により、それぞれ、410万トンのメタンが削減可能であると推定されました。
[背景と目的]
水田は温室効果ガスであるメタンの主要な発生源の一つです。世界各国の温室効果ガス発生量の算定に用いられているIPCCガイドライン(1)は、2006年に改訂されて、より精度の高い水田からのメタン発生量の算定方法となっています(2)。この方法と世界の水田耕作に関する統計データを用いて、世界の水田からのメタン発生量と緩和技術によるその発生量削減可能量を推定することを目的として研究を行いました。
[成果の内容]
2006年版IPCCガイドラインに示された水田から発生するメタンの新しい算定方法を用いて、世界の水田からのメタン発生量を算定しました。その際、世界の稲作に関して、灌漑水田、天水田などタイプ別の水稲収穫面積、栽培期間前と栽培期間中の水管理、施用する有機物のタイプと量に関するデータベースを作成し、各国・各地域別に算定しました。その結果、2000年における一年間の水田からのメタン発生量は全世界で25.6Tg(2560万トン)であり、モンテカルロシュミレーションによる95%信頼区間は14.8〜41.7Tgでした。さらに、水田の地理分布データから単位面積あたりのメタン発生量の地理分布を表しました(図1)。国別に見ると、中国とインドの合計が世界の約半分を占め、アジア地域全体で世界の93%を占めることが明らかになりました(図2)。
また、世界の稲作に普及できる可能性が高いと考えられる2つの技術、(A)常時湛水の潅漑水田への間断潅漑の導入、および(B)稲わらすき込み時期の改善(次の水稲耕作の30日前以前にすき込み)について、メタン発生の削減可能量を定量しました。その結果、それぞれの技術では年間4.1Tg(410万トン:二酸化炭素換算量で1.0億トン)であり、両技術を併用することにより7.6Tg(760万トン:二酸化炭素換算量で1.9億トン)に達すると推定されました(図3)。
これらの成果は、水田からのメタン発生が地球温暖化に及ぼす影響の再評価と、地球温暖化を緩和する稲作技術の開発に大きく貢献します。
(1) IPCCガイドライン:IPCC(気候変動に関する政府間パネル)により提供される各国の温室効果ガスインベントリを算定するためのガイドライン
(2) 平成18年度「普及に移しうる成果:2006年版IPCCガイドラインに採用された水田から発生するメタンの新しい算定方法」

本研究の一部は環境省地球環境研究総合推進費S2-3a (SSCP)「農業生態系におけるCH4, N2O ソース抑制技術の開発と評価」による成果です。
リサーチプロジェクト名:温暖化緩和策リサーチプロジェクト
研究担当者:物質循環研究領域 八木一行、Xiaoyuan Yan(南京土壌研究所)、秋山博子
発表論文等:Yan et al., Glob. Biogeochem. Cycles, doi:10.1029/2008GB003299 (2009)

図表

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