農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成21年度 (第26集)

主要成果 2

メラミン分解細菌を土壌中から発見

[要約]
メラミンをシアヌル酸まで分解する細菌を土壌中から単離しました。この菌は、Nocardioides属の新種です。さらに、シマジン(除草剤)分解菌群(2種の細菌で構成)を用いることにより、シアヌル酸は完全に分解されます。これらの微生物を利用することで、メラミンやシアヌル酸で汚染された環境を浄化・修復する技術開発やメラミンを含む廃棄物の利活用が期待されます。
[背景と目的]
メラミンは樹脂、塗料の原料として大量生産・利用されており、これら塗料を使った工場から発生する廃棄物には、多くのメラミンが分解されずに残留しています。近年、循環型社会構築のため廃棄物の再生利用が検討されていますが、メラミンとその分解物であるシアヌル酸は人体にとって有害であることから、これらの廃棄物を有効に利活用するためには、廃棄物中のメラミンおよびその代謝物質を完全に分解する必要があります。そこで、メラミン分解細菌を単離し、既存の分解細菌と組み合わせることでメラミンを完全分解できる複合微生物系の構築を試みました。
[成果の内容]
還流装置に、木質炭化素材3g、水田土壌1g を入れ、さらに、研究所が保有する5種類のトリアジン系農薬分解関連細菌を接種し、メラミンを炭素・窒素(C・N)源とする無機塩培地を還流することにより、メラミン分解細菌の集積を試みました。還流45日目以降に還流液中のメラミン消失速度が高まったことから、メラミン分解細菌が集積したと判断しました。
限界希釈法を用いて、還流液からメラミン分解菌を単離し、菌学的性質及び16S rRNA遺伝子塩基配列をもとに、Nocardioides属の新種(菌株名;ATD6)と同定しました(図1)。単離したATD6株は、メラミンをアンメリン、アンメリドを経てシアヌル酸まで分解しましたが、シアヌル酸を分解できませんでした(図2)。
一方、シマジン分解細菌CDB21株(農環研保有)はメラミンを分解できませんが、シアヌル酸を分解することが知られており、ATD6株と組み合わせることで、メラミンはシアヌル酸を経てさらに分解されました。さらに、CDB21株の生育を助ける細菌CSB1株を加えることで、シアヌル酸の分解速度は高まり、メラミンは完全に分解されました(図3)。
このように、新規のメラミン分解細菌と既存のシマジン分解細菌群を組み合わせて新たに複合微生物系を構築することにより、メラミンを完全に分解できます。今後、この複合微生物系を木質炭化素材に高密度で集積させ、廃棄物に添加することで、メラミンやシアヌル酸を分解する処理技術の開発をめざします。

リサーチプロジェクト名:有機化学物質リスク管理リサーチプロジェクト
研究担当者:有機化学物質研究領域 木和広、藤井邦彦(興和総合科学研究所)、岩崎昭夫(興和総合科学研究所)
発表論文等:木、藤井、岩崎 特願2008-311318 (2008) (メラミン分解菌ATD6株に関する特許)

図表1

図表2

図表3

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