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主要成果 7

侵入害虫クリタマバチ防除のために導入された外来天敵昆虫とそれに近縁な日本在来昆虫の交雑個体の検出法

[要約]
核リボソーム遺伝子の配列の違いを識別することにより、侵入害虫クリタマバチ防除のために海外から導入された外来天敵チュウゴクオナガコバチと、それに近縁な日本在来天敵クリマモリオナガコバチの交雑個体を的確に検出できるようになりました。
[背景と目的]
クリの侵入害虫クリタマバチを防除するために、外来天敵チュウゴクオナガコバチが海外から導入されました。チュウゴクオナガコバチを野外に放飼したことでクリタマバチの被害は激減しましたが、この外来天敵に近縁な日本在来天敵クリマモリオナガコバチとの中間的な形態を持つ個体が見られるようになったことから、両者間の交雑による生態影響が懸念されるようになりました。外来天敵が在来天敵に及ぼす影響を的確に評価するために、DNA 塩基配列の違いを利用した交雑個体の検出法の開発を行いました。
[成果の内容]
侵入害虫クリタマバチの外来天敵チュウゴクオナガコバチと日本在来の天敵クリマモリオナガコバチ(早期・晩期羽化型の2種類の生態型が存在します)の核リボソームDNAの塩基配列の一部(ITS1)を決定して、比較したところ、それぞれの配列に僅かな違いが見つかりました。DNA塩基配列の僅かな違いを検出する手法の1つであるアリル特異的PCRに必要な特異的プライマー複数を設計し(図1)、そのPCR産物を電気泳動して分離したところ、図2の(1)、(2)、(3)に示すようなバンドパターンの違いから、チュウゴクオナガコバチとクリマモリオナガコバチの交雑個体が検出できることがわかりました。
すなわち、まず(1)のPCRで、クリマモリオナガコバチ早期羽化型の配列を持つ(A)、クリマモリオナガコバチ晩期羽化型の配列を持つ(B)、チュウゴクオナガコバチの配列のみ持つ(C)個体を確定します。Aならば(2)のPCRへ進み、チュウゴクオナガコバチの配列も持つ(E)、持たない(D)個体を確定し、クリマモリオナガコバチ早期羽化型とチュウゴクオナガコバチ両方の配列を持つと確定されたEが、その組合せの交雑個体と判定できます。同様に、(1)のPCRでBならば(3)のPCRへ進み、チュウゴクオナガコバチの配列も持つ(G)、持たない(F)個体を確定し、クリマモリオナガコバチ晩期羽化型とチュウゴクオナガコバチ両方の配列を持つと確定されたGが、その組合せの交雑個体と判定できます。
本法を用いれば、両種の野外における交雑頻度を容易かつ的確に把握出来るため、外来天敵が在来天敵に及ぼす影響評価のモニタリングに大きく貢献します。
本研究の一部は文部科学省の科学研究費補助金基盤研究(B)のプロジェクト研究「侵入害虫クリタマバチと天敵寄生蜂の導入が土着寄主・寄生蜂相に及ぼす影響の解析」による成果です。
リサーチプロジェクト名:外来生物生態影響リサーチプロジェクト
研究担当者:生物多様性研究領域 屋良佳緒利
発表論文等:Yara and Kunimi, Appl. Entomol. Zool. 44: 275-280 (2009)

図表1

図表2

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