農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成21年度 (第26集)

主要成果 9

侵略的外来昆虫は、密度の低い侵入初期に根絶が容易
―交尾探索行動を仮定した新しいモデルによる解析―

[要約]
侵略的外来昆虫根絶に向けた戦略構築のため、交尾探索行動を組み込んだシミュレーションによる検討を行いました。その結果、従来使われてきた交尾探索行動を仮定しない理論予測より、低密度条件下では簡単に根絶できること、交尾能力や寿命の違いにより、効果的な防除法が異なること、などがわかりました。
[背景と目的]
昆虫は、小型で移動性が高く増殖力が強いため、世界各地に侵入して害虫化するケースも多く、生態系や農業生産、人々の健康を繰り返し脅かしています。このように侵入先で被害が顕在化した害虫を、侵略的外来昆虫と呼びます。いったん侵入地で増殖し定着してしまうと、その対策に莫大な労力と費用がかかる上、しばしば根絶が不可能となります。そこで、侵入初期の低密度条件下で、どのような防除法が最も効果的であるか、交尾探索行動を組み込んだシミュレーションモデルにより検討しました。
[成果の内容]
新しい生息地に侵入したばかりの低密度条件下では、害虫は交尾相手がなかなか見つけられないため、高密度の場合に比べて全体的な増殖率が下がるはずです。そこで、雄の交尾相手探索行動を定式化して組み込んだシミュレーションモデルを開発し、様々な防除法の効果を検討しました。特に、フェロモンなど誘引剤を使って雄を大量に捕殺する雄除去法、放射線や化学薬品などで不妊化した雄成虫を大量に野外に放す不妊虫放飼法など、交尾を阻害する防除法の効果について調べてみました。その結果、どちらの防除法も、これまで使われてきた交尾探索行動を仮定しない害虫管理モデルの予測よりも、低密度条件では、はるかに簡単に害虫個体群を根絶できることがわかりました(図1)。
さらに、2つの昆虫タイプ、甲虫型(長生きして何度も交尾できる)とガ型(短命でメスは生涯1回のみ交尾し産卵して死ぬ)を仮定して、各防除法の特徴を調べたところ、雄除去法は、甲虫型よりガ型に効果的であるのに対し(図2)、不妊虫放飼法では、たくさん放飼が可能であるときに、ガ型より甲虫型で効果が高いこと(図3)、等がわかりました。
実際の侵略的外来昆虫の防除を考えるモデルでは、交尾回数や寿命など、その害虫に合わせた生活史構造とパラメタの推定が必要となりますが、交尾探索行動を組み込んだ今回のモデルは、そのような実際の防除プログラムにおいても、より現実的な防除の帰結を予測する強力なツールとなると期待されます。
リサーチプロジェクト名:外来生物生態影響リサーチプロジェクト
研究担当者:生物多様性研究領域 山中武彦
発表論文等:1) Yamanaka and Liebhold, Population Ecology, 51: 337-340 (2009)
2) Yamanaka and Liebhold, Population Ecology, 51: 427-444 (2009)

図表

図表

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