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主要成果 11

茶生産のために維持される茶草場は貴重な二次的自然の宝庫です

[要約]
茶生産により維持される茶草場は絶滅危惧種などが多く生育する貴重な半自然草地であることが明らかになりました。また、茶草場における在来植物の多様性には、土地改変や管理履歴等の歴史性が強く影響を及ぼしていることが分かりました。
[背景と目的]
かつて国土面積の10%以上を占めていた半自然草地の減少が著しく、草原に依存する動植物が絶滅の危機に瀕しています。そのような中で、東海地方の茶産地では、良質茶の栽培を目的として茶園にススキの敷草を施す農法が行われており、その資材源としての茶草場が大面積で展開されています。このような茶草場を生物多様性の核として将来にわたり維持するには、その成立・維持に関する仕組みを明らかにする必要があります。
[成果の内容]
静岡県掛川市東山地区を対象地とし、茶草場の分布を調べました。空中写真及びGISによる解析から茶園170haとは別に、その約65%に相当する111haの広大な半自然草地が茶草場として維持されていることが分かりました(図1)。
茶草場の特徴を明らかにするため、茶草場で50地点、比較対象として造成跡地等でススキが優占する10地点において植生調査を実施し、種組成に基づいて分類(TWINSPAN)した結果、5つの植物群落タイプに分けられました(図2)。ススキが優占するGr.1、ネサザが優占するGr.2は、主に共有地として維持されている面積の広い採草地であり、在来の草原性草本が豊富で、多様度指数(H')が高く、キキョウやノウルシなどの絶滅危惧種や希少種も確認されました。Gr.3は造成跡地、Gr.4は水田跡地にみられ、ともにセイタカアワダチソウ等多くの外来植物の侵入が認められました。Gr.5は茶園脇に線状に存在する多様度指数(H')の低いススキ草地でした。
全ての調査地点において、土壌サンプリング、光環境の測定、斜面方位・角度及び土壌水分の測定を行い、土地改変履歴や管理実態については、地権者へのヒアリングで確認しました。その結果、多様度の高い群落タイプ(Gr.1、Gr.2)が現れる場所は、土壌pHが低く、一ヶ所あたりの面積が広く、土地改変が行われていないという特徴が認められたことから、草原性の植物種群にダメージを与える大きな攪乱を受けていないことが示唆されました。さらに環境要因の影響を解析した結果、特に在来種の多様性に与える影響の大部分は土地改変であることが明らかになり(図3)、農地に転用されることなく長年にわたって茶草場として継続的に利用されてきたことにより、茶草場における在来植物の多様性が維持されている実態が明らかになりました。
本研究の一部は文部科学省の科学研究費補助金基盤研究(C)のプロジェクト研究「茶草場として成立する半自然草地の多様性と維持機構の解明」による成果です。
リサーチプロジェクト名:水田生物多様性リサーチプロジェクト
研究担当者:生物多様性研究領域 楠本良延、平舘俊太郎、生態系計測研究領域 岩崎亘典、稲垣栄洋(静岡県農林技術研究所)


図表1

図表2

図表3

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