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主要成果 12

飼料作物から牛の餌とバイオエタノールを作る

[要約]
飼料作物を収穫後、サイレージ発酵している間に、糖化とエタノール発酵を同時に行う今までにないバイオエタノール「固体発酵法」を開発しました。原料となる飼料作物からエタノールと飼料を作り、ゴミが出ません。
[背景と目的]
セルロース系バイオマスを原料としたエタノール生産技術の開発が求められていますが、その実用化のためには、原料の貯蔵・糖化・蒸留コスト・廃液処理といった克服すべき課題が多々あります。我々は、バイオエタノールと家畜飼料を同時に生産すると、バイオエタノールのみ生産する場合に生じる課題を克服できると考えました。
[成果の内容]
  1. 既存のサイレージ調製工程に、糖化酵素とエタノール発酵用酵母を添加するだけで、廃液を出すことなく低コストで家畜飼料とバイオエタノールを同時に生産する「固体発酵法」を開発しました(図1)。
  2. 固体発酵法の有効性を評価するために、刈り取り直後の飼料用イネ(ホールクロップ)を切断後、酵素(セルラーゼ+グルコアミラーゼ)と微生物(酵母と乳酸菌)を添加し、現物250gの系で発酵させました。20日間発酵後、乾物重量1トンあたりに換算すると213リットルのエタノールが蓄積されました。
  3. 材料を切断し貯蔵しておくだけで、今回用いた飼料イネホールクロップ発酵後のエタノール生産効率は、農林水産省の目標値の7割に達しました。(エタノールを農林水産省目標の100円/Lで生産するための原料のエタノール変換効率は、玄米で450L/t、イナわらでは260L/tです。今回用いた飼料用イネの内訳(重量比)は玄米:イナわら=3:7のため、目標値は317L/tと試算しました。)
  4. 1トンのホールクロップからエタノールを213リットル生産する際に必要な糖化酵素の価格は127円です。また、酵素添加量を1/10に減らした場合では、エタノールが1トン当たり129リットル生産され、この時の酵素の価格は26円(Lエタノール)に押さえられました。
  5. この方法では、通常バイオマスからエタノールを生産する際に問題となる原料や発酵残さの腐敗を防ぎ、廃液や廃棄物を出すことがありません。この方法で生み出されたバイオエタノールで農機具を動かし、発酵残さを家畜の飼料として利用する一方で、家畜排泄物を肥料として農地に還元すれば、地域内で消費する化石エネルギー消費量を減らし資源を循環利用できます。

本研究の一部は農林水産省委託プロジェクト「地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発」による成果です。
リサーチプロジェクト名:情報化学物質生態機能リサーチプロジェクト
研究担当者:生物生態機能研究領域 北本宏子、堀田光生
発表論文等:1) 北本、堀田、特開2009-213440 「アルコールの製造方法」
2) 農環研プレスリリース 平成21年3月25日


図表

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