農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成21年度 (第26集)

主要成果 13

2009 年夏の低日照が特に西日本の水稲作況低下に影響したことを農環研データベースMeteoCropで解明

[要約]
2009年夏の記録的低日照が水稲作況に与えた影響を、農環研で作成したデータベースで解析し、日本海側地域における長期的な低日照傾向と作況低下との関連性を示しました。
[背景と目的]
2009年の夏は、北日本日本海側地域の日照時間が1946年以降で最も少ないなど、ほぼ全国的に日照の少ない夏でした。冷夏年だった1980、1993、2003年と異なり、2009年のような冷夏を伴わない全国的な低日照年の作況解析は、今後の地球温暖化など気候変動の影響を評価する上で大変重要です。そこで当研究所が開発した「モデル結合型作物気象データベース:MeteoCrop DB」を用いて、本年の気象状況が作況に及ぼす影響を解析し、過去の事例と比較しました。
[成果の内容]
 2009年の水稲作況は全国平均では98の「やや不良」でしたが、北海道では89と「著しく不良」となりました。また過去の冷害年では北日本の太平洋側地域で特に作況が悪かったのですが、2009年は北海道のほかは山陰など主に日本海側地域で作況が低下しました(図1左)。そこで気象庁が公表する気温と日照時間から、障害型冷害と関連の深い気温冷却量と作物の生長量に影響する全天日射量を「MeteoCrop DB」で推定し、過去の冷害年と本年の温度・日射環境を比較しました(図1右、中)。その結果、2009年は北海道北部で障害型冷害が発生する気温冷却量となったものの、全国的にはそれほどの冷却量にはなりませんでした。しかし全天日射量を見ると、太平洋側で低日射だった2003 年(図1右)とは違い、2009年は日本海側での日射不足が目立ちました(図1中)。
 また近年の高温もしくは低日照の傾向が水稲作況に与える影響を解明するため、北日本日本海側地域と山陰・北九州地域における気温・日照時間と作柄の関係を解析しました(図2)。その結果、2009年は両地域で気温と日照の関係が大きく低日照側にずれ、気温のわりに低日照であったことがわかりました。また2009年だけでなく、III期(1998年以降)(赤)の多くの年はI期(青)・II期(黒)に比べ、同程度の気温偏差でも低日照傾向にあります(図2)。III期では2003年を除き全国的な冷夏は起こっていませんが、両地域では数年に一度の割合で低日照となるなど、気温と日照時間の対応関係は低日照側に移動し、過去30年にわたり、徐々に「高温または低日照の夏」の傾向が進んでいます。
 このように、日本のコメ生産については今後とも、台風などの気象災害がなくても、日照不足の影響による地域的な作況低下が心配されます。そのため、毎年同じような解析を行い、作況に及ぼした気象要因をすばやく特定し、「MeteoCrop DB」にその知見を蓄積しすることで、今後も、気候変動の水稲作況に及ぼす影響を注視していきます。

リサーチプロジェクト名:気候変動影響リサーチプロジェクト
研究担当者:大気環境研究領域 西森基貴、長谷川利拡、桑形恒男、石郷岡康史
発表論文等:西森ら、中国四国の農業気象、22: 68-69 (2009)


図表

図表

目次へ戻る   このページのPDF版へ