農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成21年度 (第26集)

主要成果 16

露地野菜畑における土壌流亡や栄養塩流出を解析するためのモニタリングシステム

[要約]
降雨による土壌流亡や栄養塩流出を解析するためのモニタリングシステムを開発しました。露地野菜畑に簡易傾斜枠を設け、降雨感知式カメラ、流量計、自動採水装置を設置することにより、土壌の侵食と表面流出の発生状況を撮影するとともに、表面流出量を測定し、水質測定のための試料を採取することができます。
[背景と目的]
露地野菜畑からの土壌流亡や栄養塩流出をモニタリングするために、一般には人工の傾斜枠が用いられています。この方法では、実際の生産現場でない上に、表面流去水量の時系列データは得られても、土壌流亡量や栄養塩流出量に関する詳細な時間変化は解析できません。そこで、野菜植付け後の傾斜畑で土壌侵食の発生状況を分刻みで撮影するとともに、表面流出量測定と水質測定のための試料採取を同時に行う簡易なシステムを開発しました。
[成果の内容]
  1. 本システムは降雨感知式ビデオカメラ、パーシャルフルーム、自動採水装置により構成されます(図1、2)。農村工学研究所(つくば市)構内の傾斜枠および種苗管理センター嬬恋農場の露地野菜畑において、本システムが安定して稼働することを確認しました。
  2. 降雨感知式ビデオカメラで撮影した画像はWNXサーバーのメモリーに1枚1枚取り込まれます(図1、23)。フィールドサーバーのように、インターネットで送信するものではないので、高額な通信費はかかりません。
  3. 農工研傾斜枠では、本モニタリングシステムを用いた1分間隔の撮影により、斜面下端の水たまりの発生から実際の流出まで、11分の遅れのあることが明らかになりました(図4右上図)。その時の映像では、土壌表面で土壌粒子を含む懸濁水が急激に発生し10分間継続したことが確認されました。
  4. 農工研傾斜枠では、土壌の飽和透水係数192mm/hr、現場浸入能値287〜859mm/hrなど、雨水の浸透に関する諸係数と比べてかなり小さい雨量強度5mm/hr(降り始め40分間)で表面流去水が発生しました。クラスト(土壌表面皮膜)の形成によって、雨水の浸透が妨げられたものと考えられます。
  5. 同時に、採水装置により出水時のSS(懸濁物質)濃度の変動を捉えることができました(図4上図)。嬬恋農場では、キャベツがすでに成長したためか、土壌表面からの流出はあるものの農工研ほどの濁水とはなりませんでした(図2右図、図4下図)。

リサーチプロジェクト名:栄養塩類リスク評価リサーチプロジェクト
研究担当者:物質循環研究領域 坂西研二、中村 乾、生態系計測研究領域 芝山道郎


図表1、2

図表3

図表4

目次へ戻る   このページのPDF版へ