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主要成果 17

耕地の水消費とCO2吸収のオンライン監視用ソフトウェア

[要約]
耕地の水消費量とCO2 吸収量をオンラインで監視するためのソフトウェアを開発しました。観測用の測器と組み合わせて使用することにより、栽培環境が刻々変化するなかでの灌漑水管理や作物生育の監視などに活用できます。
[背景と目的]
作物生産の基本となる耕地の水消費量やCO2 吸収量の情報をオンラインで収集できれば、圃場管理に大いに役立ちます。近年、大気乱流計測の専門家以外にも普及してきた渦相関法は、耕地の水消費量やCO2 吸収量を計測するのに適した技術です。しかし、測定値の精度評価や品質判定が煩雑で、悪天候などに伴う異常値の検出に時間を要するため、渦相関法をオンラインでの監視に適用することは困難でした。そこで、誤差解析の研究成果を利用して、渦相関法の測定値の精度評価やそれに基づく品質判定を簡易・迅速化し、一般利用者でも水消費量やCO2 吸収量をオンラインで監視できるソフトウェアを開発しました。
[成果の内容]
 渦相関法で測定したフラックス(大気と耕地の間の熱、水、CO2 などの単位時間当たりの移動量)の誤差解析を行い、フラックスの相対誤差の分布は正規分布とは異なるので、中央値を代表値として用いる必要があることを明らかにしました(図1)。また、フラックスの相対誤差は、時間、場所、フラックスの種類によらず、一定であることも明らかになり、相対誤差を用いて今まで困難であった測定値の品質を判断する容易な統一基準を定めることができました。その結果、従来はデータ回収後に行ってきたフラックスの誤差計算を観測の現場で行い、測定値の精度を実時間で評価し品質を判定することが可能になりました。これを利用して、水消費量とCO2 吸収量の監視用ソフトウェア「FLUXPRO」を開発しました。
 「FLUXPRO」には以下の四つの特徴があります。(1)水消費量とCO2 吸収量の現況をオンラインで確認できます(図2)。(2)水消費量とCO2 吸収量の測定値の精度や測定 時の気象要素等のデータの品質に関わる情報も同時に提供されますので、異常値を容易に検出することができ、信頼度の高い情報が得られます(図2)。(3)過去のデータや、関連する気象要素、土壌水分などの情報も同時に閲覧できますので、栽培環境の変化に伴う水消費やCO2 吸収の変化を迅速に検知・監視できます。(4)水消費とCO2 吸収の日変化や日積算値が、その精度情報とともに提供されます(図3)。
 「FLUXPRO」は、水消費量とCO2 吸収量を迅速に高信頼度で評価できるので、ネットワークを利用した灌漑水の管理や作物生育の監視等への活用が期待されます。

リサーチプロジェクト名:温暖化モニタリングリサーチプロジェクト
研究担当者:大気環境研究領域 金 元植、間野正美
発表論文等:Kim et al.,Journal of Agricultural Meteorology,65:201-207(2009)


図表

図表

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