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主要成果 20

農業環境技術研究所に寄贈された昆虫タイプ標本379点の公開

[要約]
杉繁郎コレクション(ガ類)、寺山守コレクション(ハチ目)、田中和夫コレクション(オサムシ科)など、最近寄贈されたタイプ標本379点をWeb公開しました。タイプ標本の標本画像、種名、採集データ、文献情報などが閲覧できます。
[背景と目的]
タイプ標本(主にホロタイプを指す)とは、新種を報告する時に、その種名が指し示す唯一の個体として指定された標本のことで、世界に1つしかない貴重な標本です。国際動物命名規約により、相応の研究機関での管理が勧告されています。最近、多くのタイプ標本が含まれる、杉繁郎コレクション(アジア産ヤガ科)、田中和夫コレクション(日本産オサムシ科)および寺山守タイプ標本コレクション(アジア産アリガタバチ科等)など、貴重な個人コレクションが農環研に寄贈されました。これらの標本は、侵入害虫の検出や生物多様性の評価など、あらゆる生物学的研究を支える分類学的研究の推進に不可欠であることから、世界中から容易に参照できるようWebで公開することとしました。
[成果の内容]
杉繁郎氏から寄贈された約4万5千点のガ類標本(杉繁郎コレクションと呼称)の中から合計178点のタイプ標本を整理し、Web上で公開しました(URL:http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/inventory/insect/inssys/typelst.htm)。杉氏は、アジアのチョウ目ヤガ科を中心に研究を実施してきており、今回寄贈されたタイプ標本コレクション(図1)はヤガ科としては国内最大級であり、今後のアジア産ヤガ科の分類学的研究を進める上で貴重な資料となります。ガ類の著名な日本人研究者のコレクション(タイプ標本を含む)の海外流出がこれまで続いていましたが、学術的に重要な杉繁郎コレクションをわが国に留め、タイプ標本のデータを公開する意義は大きいと考えられます。
また、杉氏のチョウ目タイプ標本に加え、アリガタバチやアリの研究で著名な寺山守氏のハチ目127点、衛生害虫の専門家であり、またオサムシ科の研究者としても著名な田中和夫氏のオサムシ科24点など合計379点(チョウ目201点、ハチ目145点、コウチュウ目33点)を公開しました。ハチ目では、チョウ目やコウチュウ目の幼虫に寄生することから天敵としても利用可能な小型のハチであるアリガタバチが93点と多いことが特徴です。2006年から公開している568点と合わせると合計947点のタイプ標本情報が閲覧できます。
公開情報としては、標本全体、必要に応じて拡大した各部位、標本ラベル(採集場所等が記入された名札)の画像のほか、標本ラベルに記入された採集地・採集日・採集者等の情報および新種が報告された文献情報です。トップページ(図2)より目名をクリックし、種リストを選ぶと該当種の画像(図3)が現れます。

リサーチプロジェクト名:環境資源分類リサーチプロジェクト
研究担当者:農業環境インベントリーセンター 吉松慎一、吉武 啓、中谷至伸、栗原 隆


図表1

図表2

図表3

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