農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成21年度 (第26集)

はじめに

 この原稿を書いている時に、中国製冷凍餃子中毒事件の犯人が逮捕されたというニュースが報じられていました。この事件は多くの被害者をもたらましたが、他方、市井の人々の食品安全に対する意識を一挙に高めるという副次効果も生みました。食に対する国民の安全意識の高まりという潮流を先取りするかたちで、平成18年度から開始された中期計画は、安全で安心できる食料を持続して生産する農業生産環境におけるリスクの評価とリスク管理技術の開発に関する研究を重点的に推進することを企図して立てられ、さらに中途での計画の見直しによって研究課題の重点化に地球温暖化対策が加えられて、実施されてきました。この中期計画が終盤を迎えることもあって、最近では数多くの研究成果が上げられています。本研究成果情報では、これら成果の中から主要な成果を選択し「普及に移しうる成果」と「主要研究成果」を掲載しています。
 環境研究には「問題があること」を発見する研究と「問題がないこと」を示していく研究の2つがあるといわれています。前者では現象を解明し、影響を評価し、必要な対策を導き出し、さらには対策技術を開発しますが、後者では現象の解明と影響の評価が重要となります。農業環境研究は、これらに加えて、農業環境資源を収集し分類し評価し、インベントリーを作成し、情報化し、総合化を行う研究もあります。
 この研究成果情報平成21年度版は、目次を一瞥してお気づきのように、「普及に移しうる成果」8件と「主要研究成果」22件とに分けて研究成果を掲載しています。「普及に移しうる成果」は、平成21年度に上げられた農業環境研究の成果の中から主要なものを選定した「主要研究成果」の中で、国、県あるいは市町村行政部局、検査機関、民間、他独法や大学など試験研究機関、さらには農業現場などで活用されることが期待され、研究所としても積極的に広報および普及活動を行なうべき重要な成果であると位置づけられた成果です。これら成果は、毎年度末に開催される課題評価会議で選定された後に、外部有識者によって構成される評議会において審議され、「普及に移しうる成果」あるいは「主要研究成果」として認定されたものです。昨年度版で紹介した「普及に移しうる成果」の中の「植物の葉から採れたカビが生分解性プラスチックを強力に分解」が平成20年度農林水産研究10大トピックスに採択されていますが、平成21年度10大トピックスにおいても本成果情報で紹介する「カドミウム高吸収イネ品種によるカドミウム汚染水田の浄化技術(ファイトレメディエーション)」が採択されています。こうした成果のみならず、ここに掲載されている成果のなかには新聞などマスコミに大きく取り上げられ報道されたものもあります。本書に収録されている研究成果が、農業環境政策の立案、農業生産技術の開発など数々の局面において役に立つことはもとより環境知の深化に寄与するものと確信しています。
 本書が、皆様にとって有意義な情報になることを願うとともに、皆様からの忌憚のないご意見を得て、私たちの研究が更に深化する契機となることを期待しています。

 平成22年3月

独立行政法人 農業環境技術研究所
理事長 佐藤 洋平

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