農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成22年度 (第27集)

主要成果 1

ディルドリン汚染地では、ウリ科作物、根菜類、イモ類の栽培を避けるのが適切

[要約]
キュウリからディルドリンが残留基準値を上回る濃度で検出されたほ場では、代替作物として他のウリ科作物、根菜類やイモ類を栽培するのは避けるのが適切です。
[背景と目的]
キュウリからディルドリンが食品衛生法における残留基準値を上回る濃度で検出された場合、産地が受け入れ可能な代替作物の導入が有効な対策の一つとして考えられます。しかし、代替作物を選定する際には作物のディルドリン吸収特性及び基準値の大小を考慮する必要があります。そこで、土壌から作物体の可食部へのディルドリン移行率を算出し、残留基準値と比較することにより、代替作物としての適用性を明らかにしました。
[成果の内容]
ディルドリン残留ほ場で8科18作物を栽培し、各作物の可食部および株元土壌を分析しました。可食部への移行率(可食部中濃度/土壌中濃度)は、ウリ科作物、およびダイコン、ニンジン、バレイショが高い傾向にありました(図1)。
作物への移行経路を明らかにするために、いくつかの作物の部位別のディルドリン分布を比較しました。その結果、ウリ科作物では体内にほぼ一様に分布していましたが、ニンジン、ダイコン、バレイショでは可食部表面の皮に、ほとんどのディルドリンが存在していました(表1)。これは、ウリ科作物は根からディルドリンを吸収し地上部へ移行するのに対し、根菜類やイモ類では土壌中ディルドリンが外皮表面に付着しているためと考えられました。
このように、ウリ科以外の作物は土壌から根を通してディルドリンを吸収しませんが、残留基準値が低いと土壌の付着等によりこれを超過する可能性があります。そこで、可食部へのディルドリン移行率を残留基準値(不検出の場合は0.005ppmとした)で除し、基準値超過指標値を算出しました(図2)。ウリ科の中でもカボチャ、ズッキーニ、キュウリの可食部への移行率はほぼ同じ値ですが、カボチャ、ズッキーニは残留基準値が高いため、指標値はキュウリより低くなります。一方、ダイコンやバレイショは、可食部への移行率は低いですが、残留基準値が低いため、指標値はカボチャやズッキーニと同様な値となります。
したがって、ディルドリン残留ほ場におけるキュウリの代替作物としては、他のウリ科作物、および残留基準値の低い根菜類(ダイコン)やイモ類(バレイショ)は避けるのが適切です。

本研究の一部は農林水産省の委託プロジェクト研究「生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発」による成果です。
リサーチプロジェクト名:有機化学物質リスク管理リサーチプロジェクト
研究担当者:有機化学物質研究領域 清家伸康、大谷卓


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