農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成22年度 (第27集)

主要成果 3

スズメノナスビの根によるカドミウム吸収抑制を可視化

[要約]
スズメノナスビは,根から地上部へのカドミウムの移行量が少ないナスの台木種です。シンクロトロン放射光源マイクロビーム蛍光X線分析法を使って,この台木種の根の内皮近傍でカドミウムが高蓄積していることをマイクロメータースケールで可視化することに成功しました。
[背景と目的]
スズメノナスビを台木種として用いると、ナス果実のカドミウム濃度が低下します。スズメノナスビでは栽培ナスに比べ、根から導管を通って地上部にカドミウムが移行する量が少ないからです(研究成果情報第26集)。根の表面から導管に達するまでの経路上においてどの部位にカドミウムが蓄積し、導管への輸送に影響を及ぼしているのかについてはこれまで明らかにされていませんでした。マイクロメータースケールの分解能でカドミウムの分布を可視化できる技術を利用して、スズメノナスビの根によるカドミウム輸送抑制の仕組みを明らかにしました。
[成果の内容]
カドミウム低減効果のあるナス台木品種(スズメノナスビ系統、トルバム・ビガー)と、ナス品種(千両二号)を水耕栽培し、カドミウムを24時間吸収させました。大型放射光施設(SPring-8)においてシンクロトロン放射光源マイクロビーム蛍光X線分析装置を利用し、 2 μm径のX線マイクロビームで根の横断切片の表面を3μmごとに走査することで、カドミウムおよび必須元素である鉄、亜鉛の分布を分析しました(図1)。千両二号ではカドミウムが導管のある中心柱まで到達していました。一方スズメノナスビでは、内皮近傍にカドミウムが蓄積しており、この部分でカドミウムが停留していることがわかりました(図2)。スズメノナスビでは、内皮近傍の細胞によるカドミウムの取り込みが抑制されているため、導管へのカドミウム輸送量が少なくなってしまったと考えられます。一方、スズメノナスビ、千両二号ともに必須元素である鉄、亜鉛の内皮近傍における蓄積はみとめられず、カドミウムの輸送は鉄、亜鉛の輸送と異なることがわかりました。本研究で得られた成果は、スズメノナスビを台木として用いるナスカドミウム低減技術(研究成果情報 第24集)の効果の根拠を示すものです。

本研究は、生物系特定産業技術研究支援センター、新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業「食の安全を目指した作物のカドミウム低減の分子機構解明」、SPring-8共同利用研究課題(2008A1087、2008B1791) による成果です。
リサーチプロジェクト名:重金属リスク管理リサーチプロジェクト
研究担当者:土壌環境研究領域 山口紀子、荒尾知人、有機化学物質研究領域 馬場浩司、 森伸介・箭田(蕪木)佐衣子(現(独)農業・食品産業技術総合研究機構)、北島信行((株)フジタ)、寺田靖子(高輝度光科学研究センター)
発表論文等:Yamaguchi et al., Environ. Exp. Botany. 71:198-206 (2011)


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