農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成22年度 (第27集)

主要成果 13

有機・減農薬栽培は水田の水生昆虫にプラスの効果があり、その効果は周辺の環境によって違う

[要約]
有機栽培および殺虫剤を使わない減農薬栽培は、水田に生息する水生昆虫の種数を増やす効果がありました。その効果の大きさは、水田周辺の環境によって違い、周辺にため池など水生昆虫の生息場所が多く、種が豊富な地域で効果が高くなりました。
[背景と目的]
水田は、水辺の生物にとって、重要な生息場所と言われています。農地やその周辺に生息する生物を保全することなどを目的に、環境に配慮した農業(環境保全型農業)の普及が図られています。しかし、このような農業が生物の保全にどのくらい効果があるのか、またその効果は周辺の環境によって違うのかは、よくわかっていません。そこで、これらのことを明らかにするために、水田の農法および周辺環境が水生昆虫の種数に及ぼす影響を調べました。
[成果の内容]
栃木県から福島県南部にわたる6地域(図1)のそれぞれにおいて、農法の異なる水田(有機栽培または殺虫剤を使わない減農薬栽培と殺虫剤などの農薬を使う慣行栽培)を選定し、水生昆虫(ゲンゴロウなどのコウチュウ類、アメンボなどのカメムシ類、トンボ類(ヤゴ))の種類および周辺(5km×5kmの範囲)の環境を調べました。
有機・減農薬栽培水田では、慣行栽培水田に比べて、コシマゲンゴロウやタイコウチなど多くの種類の水生昆虫がみられました。ただし、この違いが大きい地域と小さい地域がありました(図2)。
そこで水生昆虫の種の違いに対する農法と周辺環境の影響を多変量解析により調べた結果、周辺環境の影響が大きいことがわかりました(図3)。次に周辺環境と種数の関係を解析したところ、周辺にため池が多い環境ほど水生昆虫の種数が多いことがわかりました(図4)。ため池は、水田の休閑期や落水期に、水生昆虫の生息場所となります。
これらの結果は、周辺にため池などの生息場所が多く、水生昆虫の種が豊富な地域ほど、環境保全型農業の導入効果が高いことを示しており、環境保全型農業を効果的に普及することに寄与すると期待されます。

本研究の一部は農林水産省委託プロジェクト研究「農業に有用な生物多様性の指標及び評価手法の開発」による成果です。
リサーチプロジェクト名:水田生物多様性リサーチプロジェクト
研究担当者:生物多様性研究領域 田中幸一、浜崎健児
発表論文等:1) 浜崎健児、植物防疫 61: 604-610 (2007)
2) 田中幸一、植物防疫 64: 600-604 (2010)


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