農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成22年度 (第27集)

主要成果 21

日本の水田と黒ボク土畑に適合する改良RothCモデル

[要約]
土壌中の炭素量の推移を予測するローザムステッド・カーボン(RothC)モデルを長期の圃場試験データで検証したところ、非黒ボク土畑では精度が良い一方、黒ボク土畑と水田では悪かったので、これらの土壌の特性を反映した改良を行い精度を向上させることに成功しました。
[背景と目的]
気候や農法が変化した場合の土壌炭素量の変化を予測するには、土壌有機物の集積・分解過程のメカニズムを取り込んだモデルが有用です。既往のモデルの多くは欧米で開発され、日本特有の水田や黒ボク土畑では十分に適合性が検証されていません。そこで汎用的なモデルのひとつであるRothC(図1)の適合性の検証を行い予測精度が上がるように改良を試みました。
[成果の内容]
日本各地の長期連用試験データ(非黒ボク土畑6地点、黒ボク土畑4地点、水田5地点)から入力データを収集し、土壌炭素量の経年変化の実測値と、RothCモデルによる予測値を比較することによりモデルの適合性を検証しました。
非黒ボク土畑では、さまざまな気象・土壌・営農管理条件を含むにもかかわらずモデル計算値は実測値と精度良く一致しました。
しかし、黒ボク土畑では計算値が実測値を大きく下回りました。そこで安定な腐植を持つ黒ボク土の特性を考慮して「腐植」コンパートメント(図1)だけの分解率を、腐植と安定な複合体を形成しているアルミニウム(Al)量(ピロリン酸塩可溶Al含量:Alp)が増加するほど小さくし、さらに「不活性有機物」コンパートメント(図1)の量をゼロにするようにモデルを改変したところ、予測精度が大きく向上しました(図2)。
水田でも計算値は実測値を下回り、水田と畑の炭素分解過程の違いを考慮する必要が示されました。水田では湛水期間中に土壌が嫌気的になるために有機物の分解が遅くなる他、畑との土壌微生物相の違いのため湛水期間以外でも有機物分解が遅れることも考慮し、それぞれのコンパートメント(図1)の分解率を、湛水状態になる水稲作付け期間には現行モデルの0.2倍、畑状態になる水稲非作付け期間には0.6倍にするよう変更したところ、精度が大きく向上しました(図3)。
このモデルを用いることで、我が国の農地の土壌炭素量の増加による大気からのCO2吸収量の推定が精度良く行えます。また、適正な有機物施用量の計算など農地の有機物管理にも活用できます。改良モデルの使用を希望する方には下記の研究担当者から配布します。

本研究の一部は環境省地球環境研究総合推進費「K1:陸域生態系の吸収源機能評価に関する研究」及び「S1:21世紀の炭素管理に向けたアジア陸域生態系の統合的炭素収支研究」による成果です。
リサーチプロジェクト名:温暖化緩和策リサーチプロジェクト
研究担当者:農業環境インベントリーセンター 白戸康人、大気環境研究領域 横沢正幸、研究コーディネータ 谷山一郎
発表論文等:1) Shirato et al., Soil Science and Plant Nutrition, 50: 149-158 (2004)
2) Shirato and Yokozawa, Soil Science and Plant Nutrition, 51: 405-415 (2005)
3) 白戸、土壌の物理性、105:15-22(2007)


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