農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成22年度 (第27集)

主要成果 26

農地由来の硝酸性窒素による地下水汚染リスク評価システムRealNの開発

[要約]
農地から流出した硝酸性窒素による地下水汚染リスクを、対象地域の土壌・地形的特性および気象条件の変動に基づいて面的に予測するためのリスク評価システムRealNを開発しました。それにより、さまざまな負荷削減シナリオの硝酸性窒素汚染リスク低減効果を予測することが可能になりました。
[背景と目的]
農地から流出した硝酸性窒素による地下水汚染には改善の傾向が見られません。地下水汚染リスクを効果的に低減するには、流域の土壌・地形的特性を考慮してさまざまな窒素負荷削減シナリオの効果を予測し、比較する必要があります。そこで、農地由来の硝酸性窒素による地下水汚染リスク評価システムRealNを開発しました。
[成果の内容]
農地由来の硝酸性窒素による地下水汚染リスク評価システムRealN(Risk evaluation for agricultural leached Nitrogen)は、土壌中の窒素形態変化・移動と作物吸収を記述するLEACHMモデル(Hutson、2003)と地域的化学物質輸送モデルMacT(Mixing areal chemical Transport、研究成果情報第27集)から構成されます。
黒ボク土にも適用できるように改良したLEACHMは、対象地点における土壌特性および気象、栽培・施肥管理を入力データとして与えることにより、さまざまなシナリオについて、保水性・透水性や有機物含量の異なる土壌からの硝酸性窒素の地下水流出濃度・流出量、および降水量の違いによるそれらの年次変動を予測することができます。予測した硝酸性窒素の地下水流出濃度・流出量の年間代表値を面的に補間した後、MacTに入力値として与えれば、流域の地形的特性を反映した、混合や脱窒を経た後の地下水中の硝酸性窒素濃度の面的分布を予測できます。また、予測値の年次変動から、硝酸性窒素が基準値を超過する確率(地下水汚染リスク)を予測し、その面的分布を図示することができます(図1)。
関東地方の畑作地域を対象として、RealNにより主要な畑作物の現況の作付状況と施肥基準をもとに予測した地下水中硝酸性窒素濃度の面的分布は、地方公共団体による実測値とよく一致しました(図2)。対象地域では地下水中硝酸性窒素濃度が地下水環境基準値の10 ppmを超過する確率が高く、化学肥料のみ施用量を50%削減しても、硝酸性窒素濃度を基準値以下に低下させることは困難なことが明らかになりました。一方、一例として化学肥料を50%削減し、堆肥施用をその代替分のみに限れば(堆肥施用量は約4割削減)、硝酸性窒素濃度が10 ppmを超える確率を効果的に低減できると予測されました(図3)。
地下水汚染リスク評価システムRealNを用いれば、対象地域の土壌・地形的特性をもとに、さまざまな窒素負荷削減シナリオの効果を予測し、比較することができます。

リサーチプロジェクト名:栄養塩類リスク評価リサーチプロジェクト
研究担当者:物質循環研究領域 板橋 直、朝田 景、浦川梨恵子、江口定夫、本谷直美、青木和博、中村 乾、加藤英孝


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