農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成22年度 (第27集)

普及に移しうる成果 8

全国土を詳細に区分できる包括的土壌分類第1次試案

[要約]
林野と農耕地を区別することなく土壌の詳細な種類を判定できる包括的土壌分類第1次試案を作成しました。この分類は、全国土の土壌の詳細な種類を調査データから検索・同定でき、土地利用に左右されない土壌情報を整備できるようになりました。
[背景と目的]
わが国では、土地利用(農耕地、林野等)毎に土壌分類が作成されてきました。そのため、林野と農耕地の境界域が入り組んだ市町村レベルでの土地利用の計画・評価等の際に支障を来していました。当研究所では、林野と農耕地を区別することなく土壌の詳細な種類を判定できる包括的土壌分類第1次試案を作成することで、多様な環境研究や行政ニーズに答えるための情報基盤(土壌情報)を整備できるようにしました。
[成果の内容]
  1. 包括的土壌分類第1次試案(包括1次試案)では、全国土の土壌を大枠的に分類するための「日本の統一的土壌分類体系第二次案(2002)」(ペド二次案)と農耕地の土壌を詳細に分類するための「農耕地土壌分類、第3次改訂版」(農耕3次案)とを融合することで(図1)、全国のあらゆる土地利用においても使用でき、市町村レベルでの農業・環境問題に関する取り組みに適した土壌区分(土壌統群)を提供できます。
  2. 包括1次試案は農耕3次案にはない土壌大群、ペド二次案にはない土壌統群の両方を取り入れた4段階のカテゴリーを設定しています(図1)。そのため、10種類の土壌大群を使った概説的な記述(図2)から、土壌統群を使った詳細なとりまとめにも対応できます。最小区分単位の土壌統群は、粘土含量の違いや礫層の有無等の土壌の性質を反映する基準によって実用的な381個に細分しています。これは、農耕3次案の最小区分単位である土壌統(計303統)よりも多く、各種縮尺の土壌図および土壌情報の作成に対応することができます。
  3. 包括1次試案を用いて土壌を分類し、土壌統群ごとの分布を地図化することで多様な環境研究や行政ニーズに答えるための土壌図を提供できます(図3)。例えばこの土壌図と、包括1次試案により類型化・指標化した炭素貯留機能、水質・大気浄化機能、土壌汚染リスク、外来植物侵入リスク等の結果とを組み合わせることで、市町村レベルでの農業・環境問題に対して具体的な提言をすることが可能となります。
農業環境技術研究所のウェブサイトより、本分類法の電子ファイルをダウンロードして入手できます(http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/publish/bulletin/niaes29.pdf)。また希望者には印刷物を配布します。

リサーチプロジェクト名:環境資源分類リサーチプロジェクト
研究担当者:農業環境インベントリーセンター 小原洋、大倉利明、高田裕介、神山和則、吉松慎一、土壌環境研究領域 前島勇治、名誉研究員 浜崎忠雄
発表論文等:1)小原ら、農業環境技術研究所報告、29: 1-73 (2011)
2)高田ら、ペドロジスト、54: 11-20 (2010)


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