農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成23年度 (第28集)

主要成果

中干し期間の延長による水田からのメタン発生の削減

[要約]
中干し期間の延長によって水田からのメタン発生を削減する効果を検証するため、全国8県9か所の農業試験研究機関圃場における実証試験を2か年にわたり実施しました。その結果、稲わら、麦わら等の有機物を施用した水田では、中干し期間を慣行からさらに1 週間程度延長すれば、コメ収量への影響を抑えつつメタン発生量を削減できることがわかりました。
[背景と目的]
水田土壌由来のメタンは我が国の人為起源メタン発生量の約30%を占めます。温暖化防止のために、水田からのメタン発生を削減する有効な緩和策の一つとして、中干し期間の延長が考えられます。しかしどのくらいの期間の中干しが有効であるのか、収量などへの悪影響はないのかなど不確かな点が多く、普及は進んでいません。そこで全国8県9か所における実証試験により、中干し延長によるメタン発生削減効果とコメ収量変動等とへの影響を明らかにしました。
[成果の内容]
中干し期間の延長による水田からのメタン(CH4)発生削減効果に関する実証試験を、全国9カ所で、それぞれ2 年間行いました(図1)。各地での実証試験では、地域ごとの慣行の中干し期間を前或いは後ろに延長し、CH4 発生量の変化を観測しました。その結果、図2 に示す福島県での観測例のように、中干しの延長(前倒し)によりCH4 発生は効果的に削減できることが明らかになりました。各地で計測された中干し期間の延長とCH4 発生比率には図3のような曲線関係が認められ、慣行に比較して中干しを一週間程度延長すると18〜72%程度CH4 の排出が削減されました。また、CH4 削減効果が生じるのは前年に稲わら等の有機物がすき込まれた圃場であることがわかりました。中干しを延長することによる一酸化二窒素(N2O)の発生量の増加は、CH4 発生量と較べて無視できるほどに少量であることも確認しました。
中干し期間を延長することで、水稲収量(精玄米重)は慣行とほぼ同等かわずかに減収する傾向(対慣行比86〜110%)が見られました。一方で、登熟歩合の向上傾向(対慣行比98〜108%)、タンパク含有率低下傾向(94〜104%)など品質・食味の向上が示されました(表1)。
この実証試験の成果は「水田メタン発生抑制のための新たな水管理技術マニュアル」として公開されています。本技術が全国の水田で普及されることにより、わが国の水田からの温室効果ガス排出削減を図ることが期待されます。

本研究の一部は、農林水産省生産局委託事業「水田土壌由来温室効果ガス計測・抑制技術実証普及事業」による成果です。
リサーチプロジェクト名:温暖化緩和策リサーチプロジェクト
研究担当者:物質循環研究領域 須藤重人、伊藤雅之(現:京都大学)、研究コーディネータ 八木一行
発表論文等:1) Itoh et al. Agric. Ecosyst. Environ., 141, 359-372 (2011)


図1 全国8県9か所の試験地; 図2 福島県農業総合センターにおけるメタンフラックス

図3 中干し期間の延長によるメタン削減効果; 表1 中干し期間の延長による精玄米重と収量構成要素変化

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