農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成23年度 (第28集)

主要成果

登熟期間の平均日最低気温と積算日射量で九州の県別一等米比率の変動を説明するモデル

[要約]
水稲の登熟期間における気象条件が一等米比率の変動に及ぼす影響を解明するために、九州を対象として、一等米比率の県平均値を登熟期間の気温と日射量から説明する簡易モデルを作成しました。モデルは高温年だった2010年をはじめ、過去の一等米比率の変化を精度良く推定できました。
[背景と目的]
近年、西日本を中心に高温や低日射に伴う一等米比率の低下が報告されています。一等米比率の低下には様々な要因がありますが、気象条件が一等米比率に及ぼす影響を解明することは、対策の立案に有用な情報となります。そこで、九州を対象として、一等米比率の県平均値の変動を気象・生育データから説明する簡易なモデルを作成しました。
[成果の内容]
本モデルは一等米比率の県平均値を登熟期間(出穂日〜収穫日)の積算日射量と出穂後一定期間の平均日最低気温から推計します。登熟期間は実測値あるいは生育モデルの推定値によって与えます(例えば、「広域水稲生育・収量変動予測モデルの自動較正およびシミュレーションプログラム」が利用できます)。気象条件に由来する一等米比率の変動を簡易に県単位で見積もることができる点が特徴です。
本モデルは気温と日射量の複合効果を考慮しています。九州における1979〜2007年の一等米比率の統計値を解析した結果、日射量が少ない場合(低日射)の一等米比率の低下は、高温条件下でより顕著になることが分かりました(図1)。そこで、登熟期間の積算日射量と一等米比率の関係をロジスティック関数で表現し、低日射の際の一等米比率の低下の度合いを気温の関数として表しました。モデルパラメータの値は、県別の登熟期間と一等米比率、気象条件に基づいてベイズ推定法で求めました。ベイズ推定法ではパラメータ値を確率分布(事後分布)として表し、品種や栽培管理の地域差についての情報も事後分布に反映されます。また、ベイズ推定法では利用者側により詳細な品種や栽培管理についての情報がある場合、その情報(事前情報)をパラメータ推定に反映することができます。
本モデルを福岡県で検証したところ、台風が水稲の生育期間中に九州で被害をもたらした年を除くと、過去29 年間の一等米比率を精度良く再現できました(図2)。また、高温年だった2010年の一等米比率の低下も九州の各県で精度良く推定できました(図3)。

本研究は、環境省環境研究総合推進費「アジア地域のコメ生産に対する温暖化影響の確率的リスク評価」による成果です。
リサーチプロジェクト名:食料生産変動予測リサーチプロジェクト
研究担当者:大気環境研究領域 横沢正幸、飯泉仁之直、岡田将誌
発表論文等:
1) Okada et al., Environ. Res. Lett. 6, 034031 (2011a)
2) Okada et al., J Agric. Meteorol. 67:285-295 (2011b).


図1 日射量と一等米比率との関係の気温による違い

図2 福岡県での予測例

図3 高温年だった2010年の九州7県における一等米比率の予測結果

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