農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成23年度 (第28集)

主要成果

広域水稲生育・収量変動予測モデルの自動較正およびシミュレーションプログラム

[要約]
広域の平均的な移植日と気象条件のデータを用いて水稲生育・収量の平年値からの変動を推定するように、水稲生育・収量予測モデルのパラメータ値を自動で較正し、生育シミュレーションを実行するコンピュータープログラムを作成しました。
[背景と目的]
水稲生育・収量予測に関する既存のモデルでは品種ごとにパラメータ値が決定されているため、都道府県のように品種や栽培管理の詳細情報が得られない広域を対象に、その平均的な生育・収量変動(平年収量からの偏差)をモデルで推定することは困難でした。そこで、過去の作物・気象データを利用者が用意すれば、当該地域のパラメータ値を自動で決定し、生育シミュレーションを行うことができるプログラムを作成しました。
[成果の内容]
本プログラム(図1)は、まず、都道府県などの計算対象地域の気象値に基づいて地域における水稲生育・収量の平年値からの偏差を推定するように、水稲生育・収量予測モデルのパラメータ値を自動で較正します。この際、得られたデータの下でのパラメータ値の不確実性を考慮することができるベイズ逆解析を使用します。これにより、これまで利用者が広域を対象に生育シミュレーションを行う際に問題となっていたパラメータ値の較正とその不確実性の評価、シミュレーション設定の煩雑さを大幅に軽減できます。
次いで、本プログラムは、得られたパラメータ値に基づいてアンサンブル生育シミュレーションを実行します。これにより、広域の出穂日や平均収量の確率分布を推定できます(図2)。品種や施肥管理の詳細情報が得られない場合でも、移植日と気象値のみを用いて広域での気象由来の生育・収量の平年偏差を推定できる点が特徴です。なお、モデルの較正には移植日と気象値に加えて、対象地域の過去の収量と出穂日、収穫日が必要です。
シミュレーションを行う期間などは設定ファイル上で簡単に編集できます(表1)。また、各パラメータ値の地域特性の情報が利用者の側にある場合は、設定ファイルを編集することで、その情報(事前情報)をパラメータ推定に反映することができます。
過去の移植日・出穂日・収穫日・収量と日別気象値は利用者が用意する必要があります。日別気象値はMeteoCropDB(http://agrienv.dc.affrc.go.jp/point/meteocrop.html)などから得ることができます。なお、このプログラムは対応するデータがあれば、都道府県だけでなく、作柄表示地帯別などの任意の地域に適用できます。

本研究は、環境省地球環境研究総合推進費「アジア地域のコメ生産に対する温暖化影響の確率的リスク評価」による成果です。
リサーチプロジェクト名:食料生産変動予測リサーチプロジェクト
研究担当者:大気環境研究領域 飯泉仁之直、横沢正幸
発表論文等:1) Iizumi et al.., Agric. For. Meteorol. 149:333-348 (2009)


図1 本プログラムの概要

図2 宮城県の平均出穂日と収量のアンサンブルシミュレーション結果

表1 設定ファイルで指定する項目

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