農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成24年度 (第29集)

NIAES 施策推進上の活用が期待される成果(主要研究成果)

独立行政法人 農業環境技術研究所

イオンビームを利用した低カドミウムコシヒカリの開発

ポイント

概要

研究(開発)の社会的背景

食品などを通じて一定の量を超える Cd を長年にわたり摂取し続けると、人体に有害な影響を引き起こすことが懸念されます。特に日本人が食品全体から摂取する Cd の約 40 %は米に由来するため、米における Cd 濃度を低減することは重要です。

2011年 2月、米に含まれる Cd の食品衛生法に基づく基準値は、「 1.0 mg/kg 未満(玄米)」から「 0.4 mg/kg 以下(玄米・精米)」に改正されました。

また、わが国では農地土壌中の Cd 濃度が高い地域が今も存在します。従来も米における Cd 濃度を低減するための様々な取り組み () が行われてきましたが、低 Cd イネを作出できれば、Cd 汚染地域における土壌を含むどのような条件下においても、特別な措置を施すことなく、安全な米を作ることができます。

:土壌を入れ替える客土法や、湛水管理やアルカリ資材施用等の Cd 吸収抑制対策が実施されています。また、農環研では、塩化鉄による土壌洗浄法、高吸収イネを用いた土壌のファイトレメディエーション技術を開発しました (平成 23 年度主要研究成果)。

研究の内容・意義

活用実績・今後の予定

低 Cd コシヒカリは、農林水産省の消費・安全対策交付金におけるカドミウム汚染土壌対策技術の一つとしても位置づけられています。また、低 Cd コシヒカリを素材に、DNA マーカーを活用して、日本の他のイネ品種への低 Cd 遺伝子の導入が進行中です。

Cd による水田土壌汚染は、アジアを中心とした海外でも大きな問題となっており、今後は、それらの国々での利用も期待されます。

問い合わせ先など

研究担当者:(独)農業環境技術研究所 土壌環境研究領域

主任研究員   石川  覚
TEL 029-838-8270

用語の解説

その他

特許: 「カドミウム吸収制御遺伝子、タンパク質及びカドミウム吸収抑制イネ」(PCT/JP2012/77300)

論文: Ishikawa S. et al. (2012): Ion-beam irradiation, gene identification, and marker-assisted breeding in the development of low-cadmium rice. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109(47) 19166-19171.

予算: 生物系特定産業技術研究支援センターのイノベーション創出基礎的研究推進事業 「食の安全を目指した作物のカドミウム低減の分子機構解明」(2007-2011)

図1 玄米 (a) と稲わら (b) の Cd 濃度

図2 圃場での生育 (a と b)、1株の草姿 (c と d)、籾・玄米の外観形質 (e)

表1 育成地における慣行栽培での栽培特性と収量

表2 食味官能試験

図3 コシヒカリと低 Cd コシヒカリを識別できる DNA マーカー

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