農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成24年度 (第29集)

主要成果

温暖化研究のために、農耕地を代表するアメダス気象観測点として「農耕地モニタリング地点」を選定

[要約]

農耕地率や都市化率などを指標として観測点周辺の土地利用を考慮することにより、全国のアメダス観測点の中から、例えば農耕地率が25〜50%以上で周辺都市化率が5〜15%のように、それら指標が各県の平均に近い65アメダス気象観測点を、その県の農耕地を代表する 「農耕地モニタリング地点」 として選定しました。

[背景と目的]

日本の気象観測点は都市域や町の中心部に多く、そこで観測された気象値には建物や道路等、人間活動(都市化)の影響が避けられません。農村域でも農地の宅地化などが進んでおり、単に観測点が農村域にあるだけでは、農耕地の気象を代表しているとはいえません。精度の高い温暖化影響評価のためには、観測点周辺の土地利用を考慮して都市化による気温上昇等の影響を取り除いた気象観測データが必要です。

[成果の内容]

国土数値情報の土地利用区分のうち、「田」と「その他の農用地」の割合を『農耕地率』、「建物用地」と「幹線交通要地」の割合を『都市化率』として集計しました。そして全国のアメダス気象観測点周辺(約5km以内)の過去( 1976 年)と現在( 2006 年)の都市化率を、各観測点のある都府県または北海道振興局(以下、単に各県)の全農地周辺(同じく5km以内)の都市化率である『農耕地都市化率』と比較しました。周辺の農耕地率がおおむね東日本で50%以上,西日本で25%以上と高く、かつ各県の平均的な農耕地都市化率(北日本では5%程度で小さいが他の地域では15%以上)に近いアメダス観測点を「農耕地モニタリング地点(以下、モニタリング地点)」として選定しました(図1:東京では選定できず)。選定に当たりこれらの指標に該当する観測点が複数ある場合には、移動や欠測が少ない所を選定し、また面積が大きな東日本の一部の県では2地点を選定しました。

本研究ではモニタリング地点のほか、他の気象観測点における周辺土地利用や月ごとの気温トレンド(経年変化率)のデータセットを整備しました。モニタリング地点の気温上昇度を地域別に集計し、大都市の気象官署や気象庁の参照地点と比較した結果、モニタリング地点における気温上昇は西日本の日最高気温で特に大きく(図2)、周辺の土地利用変化の影響だけでなく、地球温暖化や他の自然変動の影響を受けていることもわかります。

本成果は、研究機関や農業普及指導機関が、県や地方スケールで現在気候の解析や気候変化の農業への影響評価を行う際の、県や地方単位での地点選定のために重要な情報です。

本研究の一部は、農林水産省委託プロジェクト研究「農林水産分野における地球温暖化対策のための緩和及び適応技術の開発」による成果です。

リサーチプロジェクト名: 作物応答影響予測リサーチプロジェクト

研究担当者:大気環境研究領域 西森基貴、村上雅則(現:(株)グローバルオーシャン・ディベロップメント)、桑形恒男、石郷岡康史

発表論文等:1) 村上雅則ほか、生物と気象、12: 41-50 (2011)

図1 選定した65の農耕地モニタリング地点

図2 地域別に集計した農耕地モニタリング地点の25年(1980〜2006年)の気温上昇と大都市にある7つの希少官署(Metro-7)および気象庁が日本全国の平均として用いている17の気象官署(JMA-17)との比較

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