農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成24年度 (第29集)

主要成果

観葉植物ヘデラの害虫ゾウムシを新種として発表

[要約]

三重県の観葉植物栽培施設内で発生したヘデラの害虫について分類学的研究を行った結果、未知の種であることが判明したため、新種ヘデラアカアシカタゾウムシMetapocyrtus (Trachycyrtus) hederaephilus Yoshitake として発表しました。

[背景と目的]

2010 年、三重県下の観葉植物栽培施設内で見慣れない害虫によるヘデラ(別名アイビーまたはセイヨウキヅタ)の食害が発生しました。この害虫は、フィリピンを中心に約220種が知られるアカアシカタゾウムシ属の1種であることは明らかになりましたが、種名までは特定されていませんでした。そこで、この害虫の正体を明らかするために分類学的研究を行いました。

[成果の内容]

園芸植物あるいは地被植物として幅広く利用されているヘデラの害虫ゾウムシについて、国内外の研究機関に所蔵されている標本を材料に、詳細な形態観察に基づく分類学的研究を行った結果、未知の種であることが確認できたので、新種ヘデラアカアシカタゾウムシMetapocyrtus (Trachycyrtus) hederaephilus Yoshitake として命名し、発表しました(図1)。

本種(図1)は、体長 5.5 〜 7.0 mm で、体は赤褐色〜暗褐色、まばらな微毛に覆われます。頭部と前胸、上翅は円形の金緑色の鱗片を装い、その鱗片は前胸と上翅で不明瞭な斑紋を形成します。オス(図1左)は体形がひょうたん形で、脚は長くて頑強である一方、メスはより頑強な体形をしており、脚はより短くて細いなどの違いがあります。本種はヘデラを寄主植物とし、成虫は寄主の茎や葉を食害します。幼虫は土中で根を食害して成育し、成熟すると土繭を作ってその中で蛹化します(図2)。ただし、これらは栽培施設内で得られた知見であり、自然条件下でのその生態は不明です。三重県の一地点で発生が確認された以外、本種の分布に関する情報は一切ありません。人為的な環境下で突然発生した本種が日本在来とは考えにくいため、外来種であろうと考えられますが、原産地、侵入経路も含め、発生に至った経緯は不明です。

今回、ヘデラの害虫ゾウムシの種名が確定するとともに、形態的特徴や加害生態に関する情報が整理されたことにより、今後農業や植物検疫に携わる人々への情報提供のための基盤が整いました。

リサーチプロジェクト名:農業環境情報・資源分類リサーチプロジェクト

研究担当者:農業環境インベントリーセンター 吉武 啓、宮原慎一郎(三重県桑名農政環境事務所)、西野実(三重県農業研究所)、鈴木賢(同左)

発表論文等:1) 三重県病害虫防除所, 平成23年度病害虫発生予察特殊報第2号 (2011)
2) Yoshitake et al., Jpn. J. Syst. Entomol., 18: 261-267 (2012)

図1 へデラアカアシじゃカタゾウムシのオス成虫

図2 へデラアカアシカタゾウムシの発生状況

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