農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成25年度 (第30集)

平成25年度主要成果

畑土壌における古細菌群の動態と硝化への寄与の可能性

[要約]
環境DNAを用いた古細菌群集の解析手法を畑土壌に適用することで、畑土壌にも多様な古細菌群が存在し、肥培管理、特に窒素に影響を受けることを明らかにしました。さらに、これらが硝化に寄与している可能性が示唆されました。
[背景と目的]
硝化は、農業環境においてアンモニア系窒素肥料等の分解にともなう温室効果ガスの発生や地下水の汚染に関わる反応であることから、その実態解明が重要な課題となっています。硝化は、これまで主に細菌が担うと考えられてきましたが、近年、特殊な環境にのみ生息すると考えられていた細菌とは異なる微生物、古細菌の関与が注目されています(図1)。そこで本研究は、土壌から直接抽出したDNA(環境DNA)を解析し、畑土壌の古細菌の動態と硝化への寄与を明らかにすることを目的にしました。
[成果の内容]
環境DNAを用いる古細菌群集解析手法を、土壌と施肥の種類の異なる畑作試験圃場土壌に適用しました。古細菌16S rRNA遺伝子の密度(菌数に相当)と群集構造は、土壌により異なりましたが、古細菌の菌数は土壌中の窒素量が増えると増加することが明らかになりました(図2)。さらに、全ての圃場でThaumarchaeota group 1.1bという分類群が優占していました(図3)。この分類群には、硝化の初発反応であるアンモニア酸化を担う遺伝子(amoA)を持つアンモニア酸化古細菌(AOA)が含まれています。
そこで、同圃場の化学肥料区において、土壌の硝化能(硝化活性ポテンシャル)とAOA amoA密度の変化を追跡しました。施肥後硝化能が増大するのに伴い、これまで唯一アンモニア酸化を担うと考えられていたアンモニア酸化細菌(AOB)amoA密度が増大しましたが、同様にAOA amoA密度も増大しました。AOA amoA密度はAOBより高く、特に淡色黒ボク土と灰色低地土で、硝化能との間に正の相関が認められました(図4)。
このように、古細菌群は土壌の硝化過程に寄与している可能性があり、畑土壌における窒素循環を評価する際に解析対象とする必要性が示されました。
本研究は(独)農研機構・中央農研との共同研究であり、生研機構新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業「機能微生物ゲノミクスによる農耕地からの亜酸化窒素ガス低減化」による成果です。
リサーチプロジェクト名:情報化学物質リサーチプロジェクト
研究担当者:生物生態機能研究領域 星野(高田)裕子、森本晶(現:(独)農研機構・北農研)、早津雅仁、物質循環研究領域 秋山博子、長岡一成((独)農研機構・中央農研)、唐澤敏彦(同左)、竹中眞((独)農研機構・北農研)
発表論文等:1) Hoshino et al., Microbes Environ., 26: 307-316 (2011)
2) Morimoto et al., Microbes Environ., 26: 248-253 (2011)

図1 硝化過程とそれを担う微生物/図2 古細菌16S rDNA密度と土壌全窒素量の関係

図3 各土壌で検出された古細菌配列/図4 AOAおよびAOB amoA密度と畑土壌の硝化能の関係

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