農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成25年度 (第30集)

平成25年度主要成果

水抽出法を用いた水溶性農薬の作物残留分析で溶媒使用量を削減

[要約]
作物中に残留する水溶性農薬を水で抽出することで、有害な有機溶媒の消費量を削減できる分析法を確立しました。この方法は作物の出荷前検査等、残留農薬の日常分析法への活用が見込まれます。
[背景と目的]
作物の安全性を確保するには残留農薬分析が不可欠です。しかし、厚生労働省通知試験法をはじめとする通常の残留農薬分析では、試料調製(抽出やクリーンアップ)過程では有害な有機溶媒を大量に必要とするため、分析作業者の健康影響や環境負荷が懸念されます。そこで、本研究では試料調製過程の有機溶媒消費量を削減するため、ネオニコチノイド系殺虫剤等を始めとする水溶性の高い農薬を対象に水抽出法を検討しました。
[成果の内容]
ピーマン、トマト、ホウレンソウを供試作物に、ネオニコチノイド系殺虫剤等を含む数種類の水溶性農薬を対象として、水抽出による試料調製法を検討しました。この試料調製法では、磨砕均一化した試料を水で抽出し、得られた試料抽出液を2種類の市販固相抽出カートリッジでクリーンアップします(図1)。圃場で農薬散布して調製した実試料を、確立した試料調製法および厚生労働省通知試験法(以下通知試験法)でそれぞれ分析したところ、双方の分析値はほぼ同等となり、水溶性農薬の抽出に水が有効であることが示されました(図2)。
この水抽出法を、水溶性から脂溶性の種々の農薬に適用したところ、農薬の水溶解度が小さくなるに従って、回収率は著しく低下しました(図3)。この結果から、水抽出による試料調製法の限界点は、農薬の水溶解度を指標として 200 mg/L 程度となり、これよりも水溶性の高い農薬で適用可能と考えられました。
確立した試料調製法は、通知試験法と比較して1試料当たりに必要な有機溶媒消費量をおよそ70%削減できました(図1)。有機溶媒消費量の大幅な削減は、労働環境の改善や環境負荷の軽減だけではなく、残留農薬分析に掛かるコスト削減にも寄与すると考えられます。なお、残留基準値超過等の確定検査には通知試験法による分析が求められますが、この方法は、作物の農薬残留に因る消費者の健康被害を未然に防止するための出荷前検査等、残留農薬の一次スクリーニング検査法としての活用が見込まれます。
リサーチプロジェクト名:有害化学物質リスク管理リサーチプロジェクト
研究担当者:有機化学物質研究領域 渡邉 栄喜、小原 裕三、馬場 浩司、殷 煕洙
発表論文等:1) Watanabe et al., J. Agric. Food Chem., 61: 4792-4798 (2013)

図1 水抽出法及び厚生労働省通知試験法による試料調整及び有機溶媒消費量の比較

図2 水抽出法及び通知試験法によるピーマン中の水溶性農薬の残留濃度の比較/図3 水抽出法の技術的な限界点

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