農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成25年度 (第30集)

平成25年度主要成果

コムギ穂からのかび毒デオキシニバレノール分解菌の分離

[要約]
かび毒のデオキシニバレノール(DON)を分解する細菌をコムギの栽培環境から14株分離し、特にコムギの穂から世界で初めて DON 分解菌を発見しました。この分解菌は、コムギ自然汚染粒において DON を分解することを確認しました。
[背景と目的]
DON はムギ類赤かび病原因菌が産生するかび毒で、コムギやオオムギなどを汚染する可能性があります。高濃度のDONに汚染された穀類を人や家畜が摂取し続けると体重低下や免疫機能低下等の悪影響を引き起こす可能性があることから、我が国ではコムギのDONについて暫定基準値が設定されています。そのため、ムギの栽培中にDON汚染を防止、低減する技術の開発が求められています。本研究では、コムギの表面や土壌からDON分解菌の探索を試みました。
[成果の内容]
  1. コムギの葉、穂及び土壌から14株の新規デオキシニバレノール(DON)分解菌を分離しました(図1A)。特に、今回、穂にDONを噴霧処理して分解微生物を集積する方法(in situ-Plant Enrichment:isPE法)を開発することで、世界で初めて穂からの分離に成功し、コムギの穂にもDON分解菌が生存していることが明らかになりました。
  2. 分解菌は16SrDNAの塩基配列から、グラム陽性菌ActinobacteriaNocardioides属(及びその近縁種Marmoricola属)(図1B)とグラム陰性菌α-ProteobacteriaDevosia属に分かれることが明らかになりました。
  3. 2グループ間のDON分解機構は、『DONの資化能』、『DON分解活性の発現様式』、『DON分解経路』の3点で異なりました。このことから、2グループのDON分解菌は独立してDON分解機構を進化させてきたと考えられます。
  4. 自然汚染粒を用いて、穂から分離したMIMI16株(グラム陽性菌)を0.01%Tween80に懸濁して処理した結果、DON濃度が3 mg kg-1から1 mg kg-1以下に低下しました(図1C)。この成果は、MIMI16株が、かび毒を基準値(日本の小麦の暫定基準値1.1ppm)レベルまで下げることができる能力を持っていることを示唆しています。自然汚染粒でのDON低減は初めての報告です。これら分解菌は、栽培中のコムギなど様々な場面におけるかび毒汚染低減への利用が期待されます。
本研究は農林水産省委託プロジェクト研究「生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発」による成果です。
リサーチプロジェクト名:農業環境情報・資源分類リサーチプロジェクト
研究担当者:生物生態機能研究領域 佐藤育男(現:名古屋大学)、伊藤通浩(現:早稲田大学)、小板橋基夫、吉田重信、農業環境インベントリーセンター 對馬誠也、有機化学物質研究領域 石坂眞澄
発表論文等:1) Sato et al.,FEMS lett., 327: 110-117 (2012)
2) Ito et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 96: 1059-1070 (2012)
3) 佐藤育男、伊藤通浩、化学と生物、51: 211-213 (2013)

図1 分離されたDON分解細菌の系統樹と分離源

目次へ戻る   このページのPDF版へ