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平成26年度主要成果

水田土壌からの CO2 放出量とその日変動・季節変動を解明

[要約]

水田土壌から大気中に二酸化炭素(CO2 )が放出される。湛水期間の CO2 放出量は僅かであるが、夏期の中干しから水稲収穫までの期間に多くの CO2 が放出され、この期間の放出量が年間総放出量の半分近くを占めていた。年間の CO2 総放出量は、同じ地域の畑土壌と比べてやや低かった。

[背景と目的]

農耕地土壌から温室効果ガスであるCO2が大気中に放出されていますが、水田における研究は少なく、特に水稲栽培時の湛水および中干し・間断灌漑期間の放出量およびその詳細な日変動・季節変動は明らかにされていませんでした。本研究では、水田土壌からのCO2放出・吸収を湛水・落水期間を含む通年で測定し、その詳細な日変動および季節変動を明らかにしました。

[成果の内容]

関東地方の水田圃場において、通気チャンバー法によって水田の土壌および田面水からの CO2 放出を測定しました。水稲栽培時の湛水期間には、田面水からの CO2 放出は畑土壌からの放出と比べて低いレベルでした。また、水生雑草・藻類の光合成により、日中には逆に田面水に CO2 が吸収される場合がありました(図1図2a)。一方、夏期の中干し・間断灌漑に伴う落水時には、落水状態の土壌表面から多くの CO2 が放出されました(図1図2b)。

本研究での年間の CO2 総放出量は、1309 〜 2160 g CO2 m-2 y-1 で、同じ関東地方における普通畑(大豆、大麦、陸稲を栽培)の土壌で報告されている値(1770 〜 4975g CO2 m-2 y-1; Osozawa & Hasegawa 1995, Nakadai et al. 1996, Nouchi & Yonemura 2005)と比較して、やや低いレベルでした。また、常時湛水期間(入水・代かき〜中干し直前)の CO2放出量が年間総放出量の1%以内であったのに対して、中干しから水稲収穫までの期間の CO2 放出量は年間総放出量の 41〜48 %を占めていました(表1)。

本研究は、水田土壌からの CO2 放出量およびその詳細な日変動・季節変動を世界にさきがけて示したものです。水田土壌からは、CO2 以外の温室効果ガスであるメタン・一酸化二窒素も放出されることから、本研究の成果を受けて、水田土壌からの CO2 およびメタン・一酸化二窒素を含めた温室効果ガス総放出量を削減するための肥培管理・水管理手法の開発に向けて、今後さらに研究を進める必要があります。

本研究は農林水産省委託プロジェクト「地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発」による成果です。

リサーチプロジェクト名:温暖化緩和策リサーチプロジェクト

研究担当者:物質循環研究領域 西村誠一(現:(独)農研機構・中央農業総合研究センター)、南川和則、八木一行、大気環境研究領域 米村正一郎

発表論文等:1) Nishimura et al., J. Geophys. Res. Biogeosci., 120 : 63-76 (2015)

図1 CO<sub>2</sub>放出量の季節変動(連作水田のデータ)

図2 CO<sub>2</sub>フラックスの日変動の例

表1 時期別の積算CO<sub>2</sub>放出量

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